ドヴォルザーク 交響曲第9番「新世界より」:血のように赤い夕日が沈む

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ドヴォルザーク:交響曲第8番&第9番「新世界」

ドヴォルザーク 交響曲第9番ホ短調「新世界より」 作品95


「新世界より」と言えば、誰もが知ってる4楽章、それと日本では「家路」として親しまれている2楽章、これらに表されるように、おそらくクラシック音楽を代表する作品と言えるだろう。
ドヴォルザークはチェコの作曲家であり、この作品にもチェコ音楽の影響は多分にある。
しかし「新世界より」という副題、また黒人霊歌の引用などから、アメリカの音楽とも取れる。
「新しいアメリカ音楽の基礎の創造」「アメリカへのチェコ系移民に対する激励」、様々な受け取り方ができるが、ドヴォルザークはニューヨークのナショナル音楽院の院長も務めており、アメリカの国民音楽のあり方について深く考えていたことは確かである。
彼もこの作品について、自身の今までの作品に比べ「アメリカより」であることは認めている。
スメタナと並びチェコ国民楽派と称されるドヴォルザークだが、この作品からは、移民達への国民的愛情だけでなく、アメリカの音楽的展望に対する強い思いが感じられる。


黒人霊歌の影響が大きいソナタ形式の第1楽章に続き、非常に美しく、親しみやすい旋律の第2楽章、ベートーヴェンの第九を思わせるような始まりが印象的な第3楽章スケルツォ、そしてあまりにも有名な第4楽章、情熱的な旋律が響き渡り、曲の最後はストコフスキーによって「新大陸に血のように赤い夕日が沈む」と評される、創意あふれる絶品のコーダである。
4楽章がこれほど有名になるには、何か理由があるのだろう。
「新世界交響楽」と宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』に出てくるが(ちなみにこの表現は宮沢研究の1テーマにもなっている)、これは1934年出版、かなり早くから親しまれていた曲である。
最も有名な4楽章の第1主題、力強さや情熱・興奮を感じる旋律であると同時に、どこか切ない、哀愁のようなものも感じる。
また、第8交響曲「イギリス」の1楽章とシンクロするようなクラリネット・ソロからの第2主題も心に染み渡る旋律だ。
僕個人としては、この曲は誰がなんと言おうと「格好良い」。ここに異論は認めない。
こういう格好いい曲は、格好良さの帝王(?)であるカラヤンなんかが振るのが最高に似合う曲だと思う。
旋律の美しさと親しみやすさに加え、この曲の持つ西洋音楽・オーケストラの抜群な「格好良さ」が、日本における長年の認知度の高さの理由ではあるまいか。


ちなみに、所謂「シンバルが1音しか出てこなくてシンバル奏者はヴァイオリン奏者と同じギャラで云々…」というのはこの曲でもある。
だがこのシンバル・ソロは非常に重要(かもしれない)音で、新大陸を走り抜ける列車の連結音だの何だの、という深い解釈もある(実際ドヴォルザークは鉄道オタクだった)。


「この国の未来の音楽は、黒人達の歌を基礎として築かれるべきである」とドヴォルザークは語った。
現代アメリカの音楽界は、ブラック・ミュージック無しでは考えられない。
間違いなく彼は偉大な作曲家の1人である。

ドヴォルザーク:交響曲第8番&第9番「新世界」 ドヴォルザーク:交響曲第8番&第9番「新世界」
ドヴォルザーク,カラヤン(ヘルベルト・フォン),ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

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