ドヴォルザーク 交響詩「真昼の魔女」:ストーリー・テリング

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ドヴォルザーク 交響詩「真昼の魔女」作品108


ヤナーチェクはドヴォルザークの交響詩を、彼の作品のうち最上のものと評した。
ドヴォルザークはの交響詩は全部で5つあり、それらは彼がアメリカからチェコに帰国したのちに作られた、最後期の作品である。
1893年の交響曲第9番「新世界より」で、また1895年のチェロ協奏曲で、彼は交響曲・協奏曲という形式の音楽を一応完結させたと見ることができるが、その後は国民楽派の大家スメタナの交響詩集「モルダウ」の影響もあってか、一層チェコらしい交響音楽を目指した。
その結果ドヴォルザークが生み出した交響詩は、1896年から翌97年にかけて5曲もあり、5曲中4曲はエルベンというチェコの詩人による民俗的バラード集「花束」というストーリー作品をテーマにしたものとなった。
彼が選んだこの「花束」は、チェコの子どもたちに読み継がれている民話集である。
最晩年のドヴォルザークの円熟した音楽が、エルベンという詩人の巧みな文体によって語られるチェコに根付いた民話集を、いっそう生き生きと描き出す、まことに素晴らしい作品群である。ヤナーチェクのお墨付きは本物だ。
この交響詩「真昼の魔女」は、もとの民話も短い話だからなのだが、5つの交響詩中で最も短い作品である。しかし、その巧みな音楽描写は簡潔ながらも心に響くものがある。


ヤナーチェクは、交響詩「野ばと」では初演の指揮も担ったが、ヤナーチェクが最も絶賛したというのがこの「真昼の魔女」だという。僕もこの曲を最も気に入っている。ヤナーチェク大先生と同じ感想を抱けたということで、自分に自信を持っても良いのかもしれない。
まあ冗談はともかく、これはドヴォルザークの交響詩全体に言えることだが、ストーリーだけ追うと、かなり暗い。これがボヘミア流なのだろうか。
「真昼の魔女」も、最初楽しく遊んでいた子どもがむずかり出し、母親は子ども叱って、恐ろしい「真昼の魔女」を呼ぶと脅すのだが、すると本当に魔女が現れ、不気味な踊りを踊り、ついには子どもを殺してしまうという、えらく暗い話。
それぞれの描写の上手さもドヴォルザークの才だが、何より彼の卓越した音楽性が見出せるところは2点、むずかる子どもと叱る母親の描写に楽しさが満ちている点、そしてこの15分程の交響詩の半分近くがその楽しい描写で埋まっている点だ。
クラリネットによる子どもの主題とヴァイオリンによる母親の主題、またオーボエ、ティンパニ、様々な楽器がそれぞれの役を演じ、親子のやり取りの場面が目に浮かぶ。
その楽しさを十分に堪能すると、おどろおどろしく魔女は現れ、低音楽器による魔女の主題、魔女の踊り、悲劇的なクライマックスへと音楽は展開する。
バランスの良い楽器の使用、オーケストレーション、そして音楽によるストーリー・テリングの妙こそ、この曲が名曲たる所以である。
短い作品だが、練達したドヴォルザークの芸術の極みとも言えるだろう。

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