ベルリオーズ 序曲「ローマの謝肉祭」:整った芸術

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ベルリオーズ 序曲「ローマの謝肉祭」 作品9


ベルリオーズの序曲で最も人気のあるものといえば、序曲「ローマの謝肉祭」である。
1838年に初演されたオペラ「ベンヴェヌート・チェルッリーニ」を元に作られた曲だ。
同オペラは失敗に終わったのだが、第2幕の前に大きな序曲を置くという珍しいものだった。
ベルリオーズはその主題から、この序曲「ローマの謝肉祭」を生み出したのだ。
華麗な序奏に続くのは、なんとも優雅なコール・アングレのソロによる主題。
それを転調して受け継ぐのがヴィオラ、とベルリオーズお得意のコースである。
曲が徐々に盛り上がり、オペラでは駆け落ちの愛情劇を繰り広げる旋律が終わると、いよいよ謝肉祭に入る。
本祭(?)に入る前にこういう旋律を持ってくる辺り、まったくベルリオーズらしいと思うのだが、いかがだろうか。
打楽器も加わり、管楽器の唸りと共に、イタリア舞踊サルタレロが始まれば、メインの陽気な祭である。
プレストで陽気に激しく踊る様子が醍醐味だが、僕個人として思うのは、この曲のフィニッシュに装飾音符で顔を出す管楽器、これが実に味わい深い印象を与えてくれる。


レスピーギのローマの祭(ことに主顕祭)でも、祭の喧噪・狂歌乱舞が表されているし、詩人のゲーテは「ローマの謝肉祭を見物するなら、もう1度見たいという気は起こさないだろう」と語っている。
一体ローマの謝肉祭はどれほど騒がしいものなのか。
ローマの謝肉祭の激しさは異常なほどで、それもどちらかというと下品な感じであり、法皇たちが何度にも渡って鎮めようとしたものの、結局その熱狂は収まらないほどだそうだ。
この作品では、元のオペラがあるせいもあるが、そういった祭の様子も非常に美しく描かれている。
ベルリオーズはフランス人だが、1830年にローマ大賞を受賞し、そのとき実際にこの祭を見物している。
さぞうんざりするような光景だったろうが、この曲はそういうタイプのものではない。
急な転調や変化に富んだ主題を上手く用いて、聴いていて楽しく、そして美しい曲に仕上げている。
ただ激しいだけでなく、また単に綺麗なだけでもない。
激しさと美しさを本当にバランスよく併せ持っているところが人気の由縁だろうし、それでこそロマン派の芸術だという気もする。

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