フォスター 夢見る人、他:美しき音楽の時代へ願いを込めて

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フォスター名歌のすべて

フォスター おおスザンナ、草競馬、故郷の人々、ケンタッキーの我が家、夢見る人


フォスターはいわゆる「クラシック」という枠では語れない作曲家かもしれないが、最近は堅い話も多かったので、ここら辺で一休みしたい。
僕は以前からこのブログで事あるごとに、大衆音楽とクラシックの中間のようなフォスターという人は素晴らしいとか尊敬に値すると言ってきた。
彼の曲といえば、音楽の教科書にも唱歌として載っていたり、様々な音楽会で、またアンコールピースとして耳にすることも多く、誰もが知っている曲ばかりだ。
「アメリカ音楽の父」と呼ばれるフォスターは、アメリカの民謡的な歌曲を数多く作曲した。
彼自身はクラシックの器楽曲を作曲してはいないが、多くの作曲家によってその旋律は引用され、アレンジされている。
有名なものをいくつか紹介しよう。歌詞はこちらへ。


「おお、スザンナ(Oh, Susanna)」は、フォスターの出世作。ゴールドラッシュの時代に大流行した音楽だ。
一攫千金を目指し西へ向かう人々が、その旅路この陽気な曲を口ずさんだという。
「草競馬(Camptown Races)」も、これまた陽気な、そしてのどかな、草競馬に興ずる人々を描いた、幸福感がほんのりと香る名曲である。
1830年頃から流行したミンストレル・ショーという芝居のためのものだ。フォスターが歌曲作家になることを決め、妻ジェーンと結婚したばかりの頃の作品。
「故郷の人々(Old Folks at Home)」、別名「スワニー河」は、8か月に12万5千部も売れた大ヒット曲。故郷を懐かしむ人の心に、温かく染み入る旋律は、美しいのひとことだ。
河をモチーフにした曲は美しいと何度となく語っているが、実際フォスターはスワニー河には行ったことがないらしい。このあたりはさすが。
「ケンタッキーの我が家(My Old Kentucky Home)」も、ぬくもりを感じる旋律が魅力的だ。
ケンタッキー州の州歌だが、採用される際に差別表現に関して歌詞が一部変更された。
「夢見る人(Beautiful Dreamer)」または「夢路より」とも訳されるが、これは晩年のフォスターの不朽の名曲である。
「死の数日前に書かれた最後の作品」と記されて出版された曲で、まさに夜、夢、さらにはその先にあるフォスターの永遠の眠りをも連想させる曲だ。


僕はフォスターのどこが好きで、尊敬しているのかというと、その作品はもちろんのこと、彼の生き様である。
彼は家族の弾く楽器を幼いころから真似して覚え、独学で音楽を学び、合唱団を作り(「おお、スザンナ」はそこから生まれた)、町のオーケストラを率いてズンチャカと音楽をしていた。
兄の仕事の手伝いとしてほどほどに働き、ほどほどに恋をし、医者の娘ジェーンと結婚した。
そこから心機一転、バリバリ働く作曲家として歌曲を生みだし続けた。
しかし彼は、作曲家としての印税や、著作権といったものには全く疎かったため、これほどに曲を書き、人気を博していても、生活は苦しかった。
父と母を失い、創作意欲が落ちてからは、彼の運命は一気に下降線をたどる。単身ニューヨークに繰り出すも、慣れない都会暮らしから酒浸りの日々に。
酒とパンのために楽譜を作り、ジャリ銭に替えてもらうといった凋落ぶりである。落ちぶれ果てたフォスターの最後はマンハッタンの下宿先、頸動脈を切った状態で発見され、1864年の1月に亡くなった。


半分遊びのような音楽に、その日のアルコールのための音楽・・・彼の音楽は、芸術として見たら許されざる音楽だったかもしれない。
それでも彼の音楽は、今でも多くのクラシック音楽家たちに愛奏される。
フォスターの作品とその生き様からは、彼の一途な音楽への思いが、誰の胸にも、もうどうしようもないくらいに伝わってくるのだ。
彼はきっと普通に生活をしながらも、実は常に音楽を思い、音楽の方ばかり向いていたのだろう。
大衆音楽や芸術音楽という仕切りなく、とにかく「美しい音楽」が、人々の間でいつもどこでも途切れなく歌われるような、そんな世の中を彼は夢見ていたのかもしれない。
死の直前に書いた「夢見る人」では、こう歌われる。
「美しき夢見る人よ、私の歌をお聞かせする女王様、汝への優しき歌を聴き給え(Beautiful dreamer, queen of my song, List while I woo thee with soft melody)」

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