ベートーヴェン 交響曲第6番「田園」:すべてを含む恒久性

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ベートーヴェン:交響曲第6番「田園」

ベートーヴェン 交響曲第6番ヘ長調作品68「田園」


ベートーヴェンの「運命」と同時に初演され、そのときはこちらが第5番だった。
「運命」もそうだが、初演はあまり芳しいものではなかったようだが、「田園」も「運命」と並んで、現代まで愛され続けている名曲である。
この「田園(Pastorale)」という副題は、「運命」と違って、ベートーヴェン自身が付けたものであり、つまりこちらはれっきとした標題音楽なのだ。
ベートーヴェンの交響曲の中では唯一5楽章で構成されており、それぞれの楽章に
第1楽章「田舎に到着したときの晴れやかな気分」
第2楽章「小川のほとりの情景」
第3楽章「農民達の楽しい集い」
第4楽章「雷雨、嵐」
第5楽章「牧人の歌−嵐の後の喜ばしく感謝に満ちた気分」
と附されている。
それぞれ誰でも聞けばすぐにわかるほど明快に描写されているが、この曲が名曲たる所以はその描写の巧みさだけではないというのは、まあ容易に想像がつくだろう。なんてったてベートーヴェン大先生ですもの。


有名なフレーズから始まる1楽章は、実に親しみやすく、安らかな喜びに満ちている。
風景描写の見どころとしては、2楽章、川のほとりにてさえずる鳥たちの様子が木管楽器で奏でられるところ、また4楽章の嵐、ピッコロとティンパニが加わり、風雨や雷の様子を効果的に表現しているところなど。
単純明快な表現だが、それだけにこの曲全体の素朴な良さを壊さないような飾り付けと言えるだろう。
また3楽章の農民たちの踊りと5楽章の牧歌、これこそが「田園」の「田園」たる理由である。
全体的に、実にのどかで、聴けば確実に平穏を印象付けられる曲だ。
こののほほんとした雰囲気から感じるのは、自然の様子だけでなく、まさに1楽章で表されたような、喜びや落ち着き、幸福感などといった心象である。
ベートーヴェンはよくウィーン郊外のハイリゲンシュタットの森を散歩しながら楽想を練っていたのだが、このときもそうだった。
霊感をもたらし、また彼の対話相手とも言えるこの自然を、彼は心から愛し、感謝し、賛美しているのだ。
ベートーヴェンの愛した自然、この田園風景は、踊りも、歌も、嵐のような変化をも抱擁している。
それらをすべて包み込み、見守り、対話してくれるもの、それがこの「田園」なのだ。
「田園」は、耳が聞こえないことも関係なく、いつでも彼に変わらない表情を見せてくれる。
変わらない景色、変化に富む景色、そのどちらも含み、そしてその存在は常に変わらずにありつづけ、心を満たし続ける――そんな「田園」へのベートーヴェンの愛情が生み出した音楽なのだ。

ベートーヴェン:交響曲第6番ヘ長調Op.68 田園 他 [モノラル] (Beethoven : Symphony Nos. 1 & 6 / Furtwangler, VPO) ベートーヴェン:交響曲第6番ヘ長調Op.68 田園 他 [モノラル] (Beethoven : Symphony Nos. 1 & 6 / Furtwangler, VPO)
ベートーヴェン (Beethoven),ヴィルヘルム・フルトヴェングラー (Wilhelm Furtwangler),ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 (Vienna Philharmonic Orchestra)

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