デュカス 舞踏詩「ラ・ペリ」:ふとしたサスペンション

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ラヴェル:ダフニスとクロエ

デュカス 舞踏詩「ラ・ペリ」


名曲「魔法使いの弟子」で有名なポール・デュカスの管弦楽曲で、さすがに「魔法使いの弟子」には知名度では及ばないものの、彼の代表作とも言える作品だ。
もとはバレエ音楽だが、この曲と「ラ・ペリのファンファーレ」の2曲は、演奏会向けの音楽として知られる。
ペリというのは仙女の名であり、ペルシア神話の妖精である。もとのバレエはこの妖精ペリとペルシア王イスカンデルの2人が登場する、もとい、2人しか登場しない神話劇である。
ファンファーレの方が人気があって、ときどき取り上げられたりするのだが、こちらの舞踏詩の方は今ひとつ人気がない。
少し掴みどころのないような雰囲気があるが、繊細さと大胆さが両方相まっている、美しい音楽であることは確かだ。
演奏時間は20分弱とそんなに長くないので、「魔法使いの弟子」しか知らないという方にはぜひ聴いてほしい曲だ。
もちろん、「魔法使いの弟子」を知らない方は、そちらから先に聴いていただきたいのだが。


ドビュッシーと親交の深かったデュカスらしい、印象主義の面持ちがある曲ではある。
しかし、この曲がドビュッシーの印象派音楽と決定的に異なるのは、印象主義と対立さえしていたワーグナー派の音楽性をも同時に感じるという点だ。
濃厚な歌を感じるモチーフの繰り返しと変化などは、ワーグナーの手法が活かされているが、それを影で彩るのは、繊細なオーケストレーションである。
大胆に感情を表す弦楽の裏で、フルートが音階を駆け巡り、シロフォンや金物打楽器が煌めくような色彩を浮かび上がらせている。
金管が吼えるように歌うバックでは、弦楽のトレモロやトリルが、まるで綿毛のように細やかで幻想的な空気感を保っている。
ラ・ペリが作曲されたのは1911年、こういう手法は独特であり、それはデュカスの音楽性の高さを示すと同時に、後の作曲家に大きな影響を与えたことが想像できる。
残念なことに、こういうどっちつかずのような曲は理解されがたいし、印象主義にしろワーグナーのようなロマンティック音楽にしろ、そのようなそれぞれ一本筋の通った音楽とは一線を画するところにこの曲は位置しているというのも事実だ。
世の中に(良い意味で)溢れかえっている音楽に少し疲れたとき、こういう趣向の音楽はまた格別に感じる。
だからドビュッシーやワーグナーの音楽と対等に張り合うようなことは意味をなさない。
もし、デュカスの残したこの名曲に何の気なしに触れる機会があったなら、そしてこの少し変わった美しさを感じれたら、それは幸福なことだと思う。

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