デュカス 交響詩「魔法使いの弟子」:「魔法」という美学

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魔法使いの弟子~フレンチ・コンサート

デュカス 交響詩「魔法使いの弟子」


先日、東京ディズニーランドで、シアター型のアトラクション、「ミッキーのフィルハーマジック」というものを見た。ディズニー関連の名曲を3D映像とともにメドレーで送るという内容だったのだが、そのシアターはさすがディズニーらしいこだわり、外観にはデュカスの「魔法使いの弟子」の楽譜がデザインされていた。
この曲はデュカスの代表作である。寡作家で知られるデュカスが、自ら厳選して残した曲の中でも、もっとも広く知られ、演奏されてきたものだ。現代でもその人気は絶大で、録音も数限りなくある。
「魔法使いの弟子」がディズニーと関わりある曲になったきっかけは、1940年のディズニー映画『ファンタジア』に使用されたことだ。音楽監督はストコフスキー。ミッキーは「魔法使いの弟子」役を演じ、ストコフスキーがアレンジしたこの曲に合わせてコミカルに動く。『ファンタジア』の名の通り、実に幻想的で楽しい音楽と映像だ。
続編の『ファンタジア2000』でも再び登場する。同じ曲はこの1曲のみ。
これほどにディズニーに愛され、またそれによって更に多くの人に愛されることとなったこの名曲。12,3分の長さで、魔法使いの弟子がほうきに魔法をかけて水汲みをさせるも、魔法の解き方を知らない弟子はいつまでもほうきを止めることができず、水が溢れてしまい師匠に怒られて終わる、というストーリーを描く。
ゲーテの詩に基づくこのストーリーの表現もそうだが、弟子の心理的な情景も上手く描かれている。管楽器の使用も巧みで、聴いていて非常に色彩感が豊かだ。
もう少し詳しく、この曲の名曲たる所以を考えてみよう。


1897年に初演され、デュカスの出世作となった。本来は交響的スケルツォ(scherzo symphonique)であるが、一般には交響詩とされている。交響詩ということで、R・シュトラウス的な描写音楽を目指したという解釈もある一方、絶対音楽に近いとする解釈もある。音楽の骨格をしっかりと見据えて解釈した演奏もまた、映画のような映像的なものとは違う面白さがある。
また、以前ラ・ペリについて取り上げたときにも書いたのだが、デュカスの管弦楽曲には、ワーグナーのようなロマンティックな面と、親交の深い学友ドビュッシーに影響されたような印象主義的な面の、その両方が見られる。
特に「魔法使いの弟子」では、印象主義の特長を活かした描写が傑出している。その部分こそがディズニーによってさらに彩られたのだ。
このある意味どっちつかずの音楽には、自己としてのはっきりした主張がない分、駄作も生まれうる。デュカスは自身が満足した曲以外すべて破棄したそうだが、その理由もうなずける。
しかし、そうまでして彼が目指そうとしたものは何なのだろうか。そういった相反するような音楽要素の調和、ないしはその最も良いバランス・ミックスというものを、デュカスは目指していたのではないだろうか。
それは、まさにこの作品で表されているように魔法的な、複雑で謎や怪奇に満ちていて、掴みどころのないような音楽であり、このちょっと不思議な音の世界に、デュカスはひとつの美学を見出していたのかもしれない。
そして夢と魔法の代名詞であるディズニーによって愛され、多くの人にこの魔法という音楽の美を届け続けている。
魔法、人が憧れる美しさ……とらえどころがないようで、それでいて愛されるもの。デュカスの目指した「本当の芸術」がここにある。

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“デュカス 交響詩「魔法使いの弟子」:「魔法」という美学” への1件の返信

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