ボリング フルートとジャズ・ピアノ・トリオのための組曲 第2番:交差する芸術

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Suite N. 2 For Flute And Jazz

ボリング フルートとジャズ・ピアノ・トリオのための組曲 第2番


クラシック音楽かと言われると大分怪しいのだが、あまりにも素敵な音楽なので取り上げようと思う。
クロード・ボリング(ボラン)はフランスのジャズ・ピアニストであり、かのデューク・エリントン、ライオネル・ハンプトンやオスカー・ピーターソンと親交があった。
ボリングのスタイルとして特筆すべきことは、まあそれゆえにこのブログで取り上げることになるのだが、クラシックの音楽家たちとの共演が多いということだ。
ジャン=ピエール・ランパル、ヨーヨー・マ、ピンカス・ズーカーマンなど、様々な楽器の一流演奏家と共演している。
そして彼の音楽の特徴は、彼自身の演奏するジャズ・ピアノ・トリオと、クラシック畑の融合であり、全くの彼オリジナルであること。
クラシック・オン・ボッサや、ジャズ風にクラシック音楽を演奏するというのとはまた一味違う。
ボリングのジャズとクラシック両方への造詣の深さがうかがえるだけでなく、彼自身の創造性も非常に豊かだということがわかる。
このフルートとジャズ・ピアノ・トリオのための組曲は、ランパルとボリング・トリオのための作品であり、当然のことながら第1番もある。
しかし第1番より第2番の方が僕は圧倒的に好きだ。というのは、第1番ではどうしてもトリオとフルート、あるいはジャズとクラシックの間で壁一枚隔てているような、やや有機的な構造を欠いた音楽に聞こえてしまうのだ。
だが第2番は「なんだ、ただジャズ風とクラシック風が相席してるだけか」なんて残念な気持ちになることは一切ない。
ジャズとクラシックの良いところ、フルートとトリオの良いところを、上手く活かしきって、聴いて楽しい作品に仕上がっている、完成度の高い作品だ。


1.Espiegele, 2.Amoureuse, 3.Entr’amis, 4.Vagabonde, 5.Pastorale, 6.Affectueuse, 7.Intime, 8.Jazzy という構成で、CD1枚分の長さ。
1曲目の Espiegele は「いたずら」といった意味で、この曲が聴く者を一気に惹きつける、素晴らしい曲だ。
フルートとピアノが小走りするような一見生真面目な音楽を奏でる。一通り吹ききると、待ってましたとばかりにベースとドラムが、これまた小気味よく洒落た音楽を持ち込んで来るのだ。
全曲通して聴くと非常に長いので、この第1曲だけでも聴いて頂きたい。これだけでも10分ほどある。キャッチーだが上品さを失わない旋律や、転調の妙、生きたリズム……魅力的だ。
第2曲 Amoureuse はその名の通り、フルートの美しい旋律がロマンティックな恋愛模様を描く。ピアノとフルートの掛け合いも愛おしい。少女ではあるまい、大人の女性の中に見る少女のような純愛か。ドラムとベースは上手く花を添える。
バロックの趣きから、徐々に、或いは不意に、ジャズトリオの表情へと移り変わる様子が面白い。Entr’amis, Vagabonde, Pastorale は、そういったボリングのセンスが光る。特に Pastorale では美しい3拍子と4ビートの、両方が持つ長閑さを感じることが出来る。
第6曲 Affectueuse は夜ジャズ。ジャズ風の和音が幾分正統派なフルートに艶を与える。ブラシ・スネアやトライアングルも印象的だ。
あまりぶっ続けて気合を入れて聴くのも可笑しいかもしれない。ややまったり聴くのがちょうど良いか。第7曲 Intime はもうエンディングを予感させる旋律だ。
終曲が Jazzy となっている。やはり基本はジャズなのかもしれない。もうこの曲は完全にジャズである。
僕がここで扱っているクラシック音楽というのは、古典を除けばいわゆる「大衆音楽」以外の芸術音楽である。ジャズというのはその大衆音楽と芸術音楽との線引きが難しいところだが、僕は大半のジャズは芸術音楽に属すると考えている。
この組曲は、作曲家ボリングの、芸術音楽の歴史に残る、素晴らしい芸術作品だと主張しても、間違ってはいないだろう。

Suite for Flute & Jazz Trio 2 Suite for Flute & Jazz Trio 2
Claude Bolling

Sony

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