ベルリオーズ 序曲「海賊」 作品21
久しぶりの更新なので、少し軽めの文章で行こうと思う。ベルリオーズの序曲「海賊」。こちらは軽い曲というか、軽快な曲だ。
さて突然ですが、海賊というと何を思い浮かべますか? 某少年誌で連載している大人気海賊マンガか、今年のスーパー戦隊も海賊だし、ジョニー・デップのファンはあれしか思い浮かばないだろう。
最初から脱線だが、序曲「海賊」という名になる前は、序曲「赤髪の海賊」という曲名だったそうだ。
ONE PIECEで一番格好良いキャラと言ったら赤髪のシャンクスだが(異論は認めない)、ゴーカイジャーのキャプテン・マーベラスも赤だし、海賊と赤というのは縁があるようだ。
とまれ、海賊を取り上げるにはいい時期かもしれない。
序曲「海賊」は、ベルリオーズが地中海沿岸の保養地ニースに滞在しているとき、ジョージ・ゴードン・バイロンの物語詩『海賊』に触発されて、1844年に作曲された演奏会用序曲である。
中学生の頃の僕はクラシックのCDなのに“海賊”という言葉が付いている! というだけでワクワクしたものだが、この曲名は最初、序曲「ニースの塔」とされ、次に序曲「赤毛の海賊」と改題し、1852年の出版時に序曲「海賊」となった。
8分ほどの短い曲だが、ベルリオーズの卓越性がうかがえると思う。
曲が始まった途端、弾けるように旋律が繰り出され、俊敏な運動感が心地よい。
しかし、「海賊」と聞いて思い浮かぶ暴れ荒れ狂う様子というよりは、明朗快活なエネルギーの発散の様子に感じる。
また、そこからすぐにゆったりと聞かせる美しい部分へと移り変わるところも、安易な海賊というモチーフの音楽にとどまらない、ベルリオーズの卓越性と考えるべきだろう。
そう、この作品は「海賊」と名が付く割には、それほど激しい曲ではないのだ。まったく、そういうところに素晴らしさを感じるようになると、この世で楽しめない音楽などなくなってしまうだろうが、まあそういうことでもなくて、確かにこれはベルリオーズの芸術としてひとつ完成したものに違いない。
イメージとしてはジャック・スパロウのような筋骨たくましい感じでもないし、いわゆる現代の治安の悪い海に行くと遭遇するような彼らでもない。その点、今年のスーパー戦隊は近いものがある。まあ、この辺は話半分に読んでいただければ、と思う。
それでもクライマックスはやはり派手だ。これでなくては海賊は務まらない。
僕はローマの謝肉祭よりもむしろこちらが好みだし、それこそ中学生の頃から聴いているので親しみもある。
もしこの序曲「海賊」という曲名や、「ばらの騎士」「炎の天使」「恋は魔術師」などに心躍り、クラシックのCDを漁るようになった中学生がいたら、僕は温かい目で見守りたいと思っている。
ベルリオーズ:幻想交響曲 デュトワ(シャルル),ベルリオーズ,モントリオール交響楽団 ユニバーサル ミュージック クラシック |
都内在住のクラシック音楽ファンです。コーヒーとお酒が好きな二児の父。趣味は音源収集とコンサートに行くこと、ときどきピアノ、シンセサイザー、ドラム演奏、作曲・編曲など。詳しくは→more
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詳細なレビューでこの曲を聴きたくなりました。