ヨハン・シュトラウスⅡ世 トリッチ・トラッチ・ポルカ:おばさん観

Spread the love

ニューイヤー・コンサート2012

ヨハン・シュトラウスⅡ世 トリッチ・トラッチ・ポルカ 作品214


このブログは同じ作曲家を何度取り上げているかで、僕の好きな作曲家が誰かというのがある程度計れるのだが、4度目の登場となるヨハン・シュトラウスⅡ世は、やはり僕のお気に入りの作曲家なのだ。
そして、シュトラウスⅡ世は、短くて楽しい曲を数多く残している。紹介したい曲がたくさんあるのも不思議ではないはずだ。
ふとクラシック関係の本を読んでいる時に、この曲について「シュトラウスのおばさん観」という言葉が現れ、思わず笑ってしまった。
「おばさん観」なんていう言葉は初めて見た。しかし確かに「おばさん」は観察対象としては興味深いものだ。
それは普通芸術にならないと思うのだが、そんなどうでもよさそうなものまで、素敵な音楽としてクリエイトしたシュトラウスⅡ世はもっと素敵ではないか。
とかく日本人は「大阪のおばちゃん」をネタにすることが多いが、まあ大阪の特殊性はともかく、おばちゃんの性質というのは、やはり洋の東西を問わず普遍的な芸術性を持っているのだ。いや冗談だが。
この「トリッチ・トラッチ・ポルカ」は、非常に有名な曲で、日本では運動会の音楽というイメージであろう。
「トリッチ・トラッチ」(Tritsch-Tratsch)というドイツ語は、「ぺちゃくちゃ」、「うわさ話」、「(女の)おしゃべり」というような意味。
子どものかけっこにぴったりな音楽は、実はおばちゃんたちのおしゃべりだというのだから面白い。運動会に来ている保護者のことを上手く表現している、とでも言おうか。


オーストリアの役者で喜劇作家ネストロイによる同名の喜劇“Der Tritsch-tratsch”とかけたという説もあるが、真相は不明。
シュトラウスⅡ世の最初の妻が飼っていたプードルも「トリッチ・トラッチ」という名であった。よく吠えたのだろう。
音楽はシュトラウスらしい軽快なポルカ。いつ聴いても楽しいものだ。
第一主題の、2音ずつ進む旋律で、オクターブ下の合いの手が実に小気味良い。これは音楽的には良くできた相槌だろう。本当に話を聞いているのかもあやしいが、テンポよく話が進むのはおばちゃんたちの立ち話。洗濯の合間、買い物途中、短い時間に内容たっぷり。
クープランも同じような趣旨の曲(おしゃべり、美しいおしゃべり女)がある。パリもウィーンも、こういうのは万国共通なのだろう。
シュトラウスのおばさん観、これはシュトラウス自身のおばさん観でもあり、そして彼が見た「男から見たおばさんの印象」という普遍的なテーマでもある。
ゴシップばっかり、小うるさいし、ちょっと下品だなあ、という皮肉も込めつつ、まあまあ楽しげで結構なことで、と楽しそうに話す女たちを横目に書いたものか。
なぜ「おばさん」と決め付けるのか! そう言われると苦しいが、シュトラウスのポルカ「おしゃべりなかわいい口」という曲と聞き比べてみるのも良いかもしれない。おしゃべりにしても、おばさんと、若い女性とでは、かわいさという点で違うのではないか? まあ、あまり言うと失礼なことを書くかもしれないから、このあたりにしておこう。
そういえば、この曲のスコアの表紙には、井戸端会議中のおばさんたちが描かれているので、見てみて欲しい。
ちなみに歌もある。ウィーン少年合唱団の十八番でもあり、今年のニューイヤー・コンサートでも演奏されたのは記憶に新しい。
聴いていて単純に楽しい。楽しく愉快な女のおしゃべり。彼女らの機嫌が良いのは、男にとっても厄介がなくて一番だ。

ニューイヤー・コンサート2012 ニューイヤー・コンサート2012
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 ヤンソンス(マリス),ヤンソンス(マリス),ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

SMJ
売り上げランキング : 9818

Amazonで詳しく見る by AZlink


ここまで読んでくださった方、この文章はお役に立ちましたか?もしよろしければ、焼き芋のショパン、じゃなくて干し芋のリストを見ていただけますか?ブログ著者を応援してくださる方、まるでルドルフ大公のようなパトロンになってくださる方、なにとぞお恵みを……。匿名で送ることもできます。応援してくださった皆様、本当にありがとうございます。励みになります。

Author: funapee(Twitter)
都内在住のクラシック音楽ファンです。コーヒーとお酒が好きな二児の父。趣味は音源収集とコンサートに行くこと、ときどきピアノ、シンセサイザー、ドラム演奏、作曲・編曲など。詳しくは→more

にほんブログ村 クラシックブログへ にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ 
↑もっとちゃんとしたクラシック音楽鑑賞記事を読みたい方は上のリンクへどうぞ。たくさんありますよ。

Spread the love

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

*

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください