オッフェンバック 「天国と地獄」序曲:クラシックの顔

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オッフェンバック 「天国と地獄」序曲


オペラの序曲を単独で取り上げるのには少し抵抗があることもあるが、さすがにこのレベルの曲になると、まったく抵抗はない。これはもはやクラシック音楽の“顔”である。
これほど有名になるのも当然だとうなずけるほどに、実によく作られた名曲である。この曲を生み出したオッフェンバックは、ドイツ生まれで後にフランスに帰化した作曲家。オペレッタの祖として語られる事が多い。ちなみにオッフェンバックはペンネームである。
オペレッタというジャンルは、オペラに比べて軽く扱われることがままあるが、その開拓者であるオッフェンバックもまた批判の集中砲火を浴びた。それでも多くの作品を残し、こうしてクラシック音楽を代表するような作品(といっても、肝心のオペレッタではなくて序曲だけだが……)を生み出したのだから、やはり彼はすごい人物なのだ。
序曲だけが有名になってしまいオッフェンバックとしては残念なのかもしれないが、現代でも有名な彼の作品はというと、オペラ「ホフマン物語」の『ホフマンの舟歌』、バレエ音楽「パリの喜び」と、いずれもオペレッタではないという、なんとも皮肉なことである。
「天国と地獄」は、正式には「地獄のオルフェ」(Orpheé aux Enfers)といい、全2幕4場のオペレッタである。よく取り上げられるのはその序曲であり、10分ほどの長さ。
序曲は3部構成で、特に有名なのは最後の第3部。フレンチ・カンカンのリズムで進む楽しい音楽には、魅了されない人はいないだろう。


クラシックの顔ともなると、やはり忙しく露出するわけで、様々なところでこの曲が使われている。
何が一番ポピュラーだろうか。「運動会の音楽」としても大変有名だが、これはどちらかというと「ウィリアム・テル」に軍配が上がる。たぶん。
するとここは文明堂の歌だろう。三時のおやつが天国になるか地獄になるか、そんなあやふやでいいのかと言いたくなるのだが、カステラは天国的な美味しさなので大丈夫。これでは「天国のオルフェ」になってしまうが、まあどうでも良い。
個人的な思い入れとしては、NHK教育で十数年前に放送された「音楽ファンタジーゆめ」という素晴らしい音楽番組で取り上げられていたものを挙げたい。
クラシックのアレンジがオリジナルのアニメーションとともに放送される子供向け番組だが、「天国と地獄」の音楽に乗って、白いお化けと黒いお化けが追いかけっこをするシーンはよく印象に残っている。
子供向け番組にもぴったりなほど、聴きやすい楽しいメロディー。最後のフレンチ・カンカンの部分は、オーケストラの演奏も楽しそうだ。中には結構伴奏とメインのメロディーがずれそうになる録音もあるが、それもご愛嬌。快速で飛ばして、ガンガン行くのが楽しい。
この曲の良さはもちろんそこだけではない。長いヴァイオリンのソロによる、美しいメロディーも聴きどころだ。ここが上手いかどうかで、名演かどうか判断しても良いと言えるくらい、大事な部分だろう。
溌剌とした冒頭部分、ゆるやかに流れる部分、ソロ、優雅なワルツ……短い曲だが、たくさんの要素があり、その各々の要素がすべて魅力的だからこそ、ここまで名曲となったのはもう言うまでもない。
アレンジとして、BGMとして、そしてもちろん演奏会のナンバーとして、そう、クラシック音楽の顔として、これからもずっとずっと活躍してほしいと願っている。
オッフェンバックが傾倒したオペレッタ作曲には、ポピュラーに寄り過ぎという批判がついて回ったが、今こうして、「最もポピュラーなクラシック音楽」の名誉を手に入れたのだ。オペレッタどうこうはともかく、彼は報われたと言って良いのではないだろうか。

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