ウィーン・フィルハーモニー ウィーク イン ジャパン 2019

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プロコフィエフ:ピアノソナタ第1,4,6番


今年もなんとかウィーン・フィルにありつけました。今年はブロンフマンでラフマニノフ3番ですよ。うわー。これは楽しみですね。ソワレだけど行かせてくれた寛大な妻に感謝(なんか毎回書いてる、でも書いておこう、こういうの大事大事)。ティーレマンが振るブル8の方も好評だったようで、期待しつつ会場へ。ブルックナー、あまり僕自身は話題にしませんが、実はすごく好きなんです。当然行きたいですし、メータとベルリン・フィルもやるのでそちらも行きたいのですが、まあ現実的に難しいのと、やっぱり優先させるとなると、ピアノ協奏曲を選んじゃうんだなあ。


【ウィーン・フィルハーモニー ウィーク イン ジャパン 2019】
(2019年11月13日、サントリーホール)


ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番 ニ短調 作品30
・ソリストアンコール ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第7番 ニ長調 作品10-3より第4楽章
ストラヴィンスキー:バレエ音楽『春の祭典』
・アンコール ヨーゼフ・シュトラウス:ポルカ・シュネル『憂いもなく』作品271
指揮/アンドレス・オロスコ=エストラーダ
ピアノ/イェフィム・ブロンフマン


昨年のウィーン・フィルはなかなか、アレな感じのドッペルを聴いてしまったのですが、今年は切れ味あるオケで、逆にちょっと驚きです。ティーレマンならまだしも、オロスコ=エストラーダは、ラジオなんか聴いてもそれほど心ときめいたりもしなかったのですが……それでもブロンフマンは聴きたいなあと思いこのプロを選んだ訳です。ブロンフマンのラフマニノフと言えば、昔の録音や録画のイメージだと、ソコロフ並の重戦車演奏を思い起こす人もいるでしょう、15年前とかでしょうかね。最近(というほどでもない)になると、例えば2010年代前半からのユロフスキ/スヴェトラーノフ響やガッティ/ヘボウとのバルトーク、またはヤンソンス/ヘボウとのベートーヴェン、ムーティ/シカゴやラトル/ベルリンとのブラームスなんか、木々をなぎ倒しながら進む戦車というよりも、テクニックには若干ムラがあるかもしれませんが、それでも示す高度な技術と、品のある丁寧で美しい音色表現でもって空中を漂う妖精のような。それはさすがに言い過ぎでしょうか。冒頭オクターブの第1主題、消えそうなくらい、か細い声のライン、なんと美しい……これが再現される度に洗練され極まる。カデンツァも、濃い口でありながら、決して攻撃的ではない品の良さを湛えており、素晴らしいですね。椅子から立ち上がらんばかりの気合いもありました。まああれですよ、確かにそれでも覇気は無いかな、でもそりゃしかたないわ。デカい音でバンバン弾くラフマニノフ聴きたいなら若い子とか、まあ音大生でも聞いとけばいいんじゃないですか、何が「ブロンフマンも老いた」だの「枯れた」だの、適当なこと言っちゃってさ、貴殿の耳が遠くなったのでは? 最近の録音を少しでも聞いてりゃわかるでしょうに、あ、聴いてらっしゃらない、すみませーん。録音聴いた上で言ってるならなおさら、メータじゃないが「知らなかったとは言ってほしくない」ってやつですね、せいぜい昔のラフマニノフだけ聴いてたら結構なこと、ベートーヴェンとブラームスなんて聴かずにどうぞ。そもそも、伴奏がウィーン・フィルですよ? 合う音色ってのがあるよ、その辺、わかってらっしゃるのかしら?


よし、ひとしきり冗談半分で愚痴ったのでもう満足です。好き好きはあるでしょう、自称クラシック通の方は満足できない人もいたかもしれませんが、通とかオタクではない、いわゆるウィーン・フィルを聴きに来る客層(わかりますよね?)には十二分に受けたのではないかと思いますね。オロスコ=エストラーダは動きが多くて見る分には面白かったでしょうし、P席の人たちはそれだけでも楽しかったんじゃないでしょうか。協奏曲ではソロとよくコミュニケートし、それらしく交通整理していました。それが必要だったか不要だったかは知りませんが。オケは案外縦も揃ってたし、それ以上にメロメロの音色で、ラフマニノフにはぴったり。とても良かったです。春の祭典、生で聴いたのいつぶりかな、これも良かったですが、僕は語るほどこの曲に知識も思い入れもないので、なんとも言えません、けども、少なくともオケの機能的な高さは昨年よりずっと楽しめました。冒頭たっぷり過ぎるくらい伸ばしのファゴット、ダルティガロング改めデルヴォーさん、掴みもばっちりでしたね。そう言えばウィーン・フィルの打楽器でギロ演奏するのって、あんまり見ないので、貴重で面白かったです。真っ赤と真っ黄でしたが、どこのでしょうか、ギロ特定班の到着が待たれます。アンコールはオロスコ=エストラーダは客席に指示を出して、多分ですがバスドラムに合せて手を叩くように指揮していたんでしょうかね。上手くいったときは褒めて、ダメな時は首かしげたりして、役者でございました。まあでも、やっぱりこれですよ、ウィーン・フィルの公演で体験したかったのは。満足でした。ミーハーなので今年もTシャツ買いました。僕の寝間着になります。

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Author: funapee(Twitter)
都内在住のクラシック音楽ファンです。コーヒーとお酒が好きな二児の父。趣味は音源収集とコンサートに行くこと、ときどきピアノ、シンセサイザー、ドラム演奏、作曲・編曲など。詳しくは→more

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