先週も都民芸術フェスティバルで、同じすみだトリフォニーホールで都響を聴きました。そのときも言いましたが都から助成金の出るイベントだから払った税金を取り戻すために行くべし!という理由ではなく、たまたま予定的に行けただけです。2週続けてオーケストラのコンサートに行くなんて自分としては珍しい。今度は新日フィル、トリフォニーは本拠地ですね。
【2025都民芸術フェスティバル 新日フィル】
(2025年2月26日、すみだトリフォニーホール 大ホール)
モーツァルト:歌劇 「フィガロの結婚」 K.492 <序曲>
伊福部昭:マリンバとオーケストラのための 「ラウダ・コンチェルタータ」
ソリストアンコール
ドビュッシー(沓野勢津子編曲):組曲「子供の領分」より第3曲「人形へのセレナード」
エルガー:エニグマ変奏曲 作品36
アンコール エルガー:愛の挨拶
指揮/川本貢司
マリンバ/沓野勢津子


先週は大寒波で、東京もすごく寒かったんですが、今日は逆に暖かくて最高気温17度。どう考えても、プログラム的には逆だよなあなんて思いつつ。先週の都響はメインがシューマンの春ですし、今回の新日フィルは伊福部とエルガーという北を感じさせる演目。ロンドンって北海道より北ですからね。おい、絶対先週が暖かくて、今日が寒いのが合ってただろ、お天気さん、空気読んでくれよ!
まあでも暖かい分には文句ないですよ。開演前にステージで管打楽器が伊福部の練習をしていた。するよね。開演してモーツァルトのフィガロの結婚序曲、さすが劇場歴も長い(?)指揮者さん、美しく流れる。金管が柔らかくて良いですね。春だなあ、暖かい日にぴったり。
楽しみにしていた伊福部のラウダ・コンチェルタータ、期待通りに素晴らしかった。いやあ、大満足。マリンバの沓野さん、まず衣装も素敵、ちょっとアイヌっぽい感じも漂うような(全然民族衣装とかではないです)、なんというか、詳しくないんであれですけど、伊福部の曲をやるのに良さげなお召し物でしたね。楽器はコオロギ。それも良い。かなりソリストに近い席で聴けたのもあって、マリンバの空気の振動がビンビン来る。たまらない。オケも良かったなあ。緊張の途切れぬ張り詰めた空気感、妥協なき強奏と律動、これを聴きに来たんだ!って感じ。後半少しずれそうなタイミングもソリストがサッとオケに寄る、常に良い協働、素晴らしかった。カデンツァも良かったなあ。そもそもね、この曲、良い曲過ぎるんですよ。本当に。日本の協奏曲史上、最高傑作なんじゃないかと、そう思わせられるような演奏でした。やっぱ生で聴くと凄いわ、マジで凄い曲だ。いやあ、感動した。最近聴いたコンサートの中では圧倒的に食らいましたね。感動して泣くような曲じゃないかもしれないけど、心の奥底に響くというか、ね、自然と涙も出てくるような、いや実際泣いてはいないんですけど、泣きたくなってくるような音楽ですよこれは。なんでかわかんないけどね。それもこれも、演奏が素晴らしかったからです。ありがとう!
沓野さんのアンコールはドビュッシー、これも絶妙だった。正直、この伊福部の後のソリストアンコールなんて何持ってくるのが正解なんだろうなんて思ったけど、これはめちゃ良かったと思うわ。ついでに「雪は踊っている」もやってくれても良かったですよ、白いヘッドのマレットだったし、なんてね。まあでも暖かい日だから「人形へのセレナード」で良いのだ。僕も学生の頃、打楽器アンサンブル向けに子供の領分の「グラドゥス・アド・パルナッスム博士」と「ゴリウォーグのケークウォーク」を編曲して演奏したのを思い出した。もちろんマリンバも使いましたよ、まあ僕自身はヴィブラフォンやったけど。マリンバとドビュッシーは合うよね。
さてどんなエルガーが来るかなと期待して、本日は北プロだし、渋い渋いエニグマってのもありだよなあ、なんて思っていたら、渋いどころか鮮やかな色相のエニグマでびっくり。Twitterで書いたけど最近高関さん指揮仙台フィルのエニグマをYouTubeで聴いて、渋くて良いなあ、みちのくだなあなんて思っていたんですが(適当です)、今日のエニグマは陽の様相、なかなか劇的で刺激的であった。テンポも早かったね。ストーリーテリング、交響絵巻エニグマって感じか。カロリー高かったわ。そういうエルガー演奏って嫌だなと思う気分のときももちろんある、でも今日はね、なんてったってフェスティバルですから、しかも外めっちゃ暖かいし、良いんじゃないですか、気分も盛り上がってくるよね! というかまあメインがエルガーの交響曲だったらまた別だけど、エニグマだし、色彩も表情も盛り盛りで豊かな演奏も好きですよ。ドラマチックで、速いテンポ感に流れるような演奏、おかげでニムロッドが良いコントラストで映える。感動的だ。ロンドンにも春一番が吹いたであろう、熱いエニグマでした。アンコールに愛の挨拶、文句ないでしょう。熱い熱いエニグマの後に、ちょっと火照りをとるような良い塩梅の愛の挨拶。フェスティバルっていうならこのくらいのおまけもほしいですよね。楽しいコンサートでした。

都内在住のクラシック音楽ファンです。コーヒーとお酒が好きな二児の父。趣味は音源収集とコンサートに行くこと、ときどきピアノ、シンセサイザー、ドラム演奏、作曲・編曲など。詳しくは→more