東京・春・音楽祭、そういえば昨年も東京都美術館の講堂で聴いたなあと思い、ブログを読み返す。昨年は「フェルメールと17世紀オランダ絵画展」でしたね。中野振一郎さんのチェンバロを聴いたのでした。今年はエゴン・シーレ展。とても見応えあって楽しい展覧会でした。そしてまたしても、昨年と同じく、このミュージアムコンサートが今年初の演奏会訪問になりました。今年の1月2月はもう、忙しかったからね……。
【「エゴン・シーレ展」記念コンサート vol.3 タレイア・クァルテット】
(2023年3月27日、東京都美術館 講堂)
ウェーベルン:弦楽四重奏のための緩徐楽章
シューベルト:弦楽四重奏曲 第14番 ニ短調 D810《死と乙女》
タレイア・クァルテット
ヴァイオリン:山田香子、二村裕美
ヴィオラ:渡部咲耶
チェロ:石崎美雨
たまたま行けるタイミングで、僕の大好きな曲が2曲も聴けるなんてラッキー。どちらも昔ブログに書いており、ウェーベルンの方は2009年、シューベルトの方は2017年に、曲についてのエッセーを書いています。特にシューベルトの死と乙女は大好きな弦楽四重奏曲で、ウィーン弦楽四重奏団の演奏会で2010年、2014年、2017年と3度聴いています。あとはオススメ音盤記事でケラー四重奏団の演奏について書いたものもあります。感想記事も音盤紹介記事もリンクから飛べるのでぜひご覧ください。はい、宣伝でした。
タレイア・クァルテットの皆さんについては全く知らないのですが、2014年、藝大在学中に結成したそうです。2014年って最近な気がするけど、もう10年くらい前なんですね……光陰矢の如し。山田さんと石崎さんが赤のドレス、二村さんと渡部さんが黒のドレス(違ってたらごめんなさい)で、トランプみたい、いや、真っ赤なドレスを見て前日にいちご狩り行ったのを思い出し、それを振り払いシーレ展で見た絵を思い浮かべつつ聴くウェーベルン。シーレの活躍した時代に書かれた曲ですね。ウェーベルン若書きの名曲、楽しみました。正直、なんかあんまり上手く噛み合ってない感じの演奏で、瞬間瞬間は面白かったりきれいだったりするんですけど、時間軸の関係性が無いなあって感じ。1曲目だからってのもあったのか、全体的にぎこちなかった。まあロマンチックな熱演ではありました。なんというか、カルテットが全然この曲に慣れてる感じがしないんですよね、僕は20年弱愛聴してる曲だから尚の事そうなのかもしれない。まあでもね、この曲はぎこちなくても「人生って、そういう瞬間もあるだろ」って解釈すれば全然良いんですけどね、そうでない曲だってあるし。シーレもそういう角度を好んでくれるかもしれない、なんてね。ラングザマーザッツの懐の深さよ。こなれた演奏されたら、それはそれで何か超絶凄い光るものがないと面白くないのかもしれない。
というか、この会場が弦楽四重奏、あるいは今回の曲目に向いているのかどうか甚だ疑問だ。モーツァルトとかならいいのかもしれないし、ヴァイオリンとピアノのデュオとかも良いかもしれない。けど、よりによって初期ウェーベルンのゴテゴテに濃い後期ロマン派風音楽と、シューベルトの、初期ではなく後期の大作中の大作が、残響を活かしたり残響に助けられたりというのがない会場なのはなんかもったいない。昨年チェンバロ聴いたときはちょうど良かったけどね。まあ、今日はホールじゃなくてサロンで聴いてるんだと思い直し(サロンでやる曲じゃないよね)、2曲目、シューベルト、冒頭からすごい。とても良かった。こっちは古典派の方法論得てます感が出てて、きちっとハメてバリッと聴かす、かっちょいい。ウェーベルンで肩慣らししたおかげかしら。2楽章も各変奏が奏者同士コンセンサス取れてる感じで美しかったです。終楽章までばっちり楽しめました。怒涛のクライマックスも力が溢れてて、良いもの見させていただきました。今度は響くホールで聴きたいですね。あと、個人的にはチェロの石崎美雨さんという方、音楽的に面白いものを感じたので、機会があれば何か聴いてみたいところです。
都内在住のクラシック音楽ファンです。コーヒーとお酒が好きな二児の父。趣味は音源収集とコンサートに行くこと、ときどきピアノ、シンセサイザー、ドラム演奏、作曲・編曲など。詳しくは→more