土曜の夜はクラシック以外の音楽の話~その5

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【序文】
Twitterを始めて、そこでは「土曜の夜はクラシック以外の音楽の話」と銘打って、その通りクラシック以外の音楽の話を少しだけしている。僕自身ピアノだけでなくドラムやシンセサイザーをやるのもあって、クラシック以外にも好きな音楽はたくさんあり、それを紹介したいと思いつつ、あんまりそっちに力を入れてブレちゃうのもどうかなと思い、週1のツイートに抑えている。が、それも随分たまったので、ちょっと改変して転載したいと思った次第。

本当に適当に、マイブーム的に聴いて気にいったもののときもあれば、昔から好きなものもあるし、好きなものを好きなように書いているだけ。何かの参考になるかどうかは微妙ですが、まあご笑覧ください。

Nicki Parrott


2021年4月17日
なんとなくカーペンターズが聴きたくなって、こういうときはベストを聴こうベストを、と思い家を探してみるけど何故かベスト盤が見当たらない。別に配信でも何でも聴けるんだけど、なぜか躍起になってCDを探してしまうことってあるじゃないですか。でもそういうときって大体ないんだな。しかたないので(失礼な言い方だなあ)、Nicki Parrottがジャズ・アレンジでカヴァーした“Yesterday Once More: Carpenters Song Book”(2016)を流す。やっぱり元の曲が良い曲だと、どうしたって良くなるねえ……もちろん歌も素敵です。ベースを弾きながら歌うニッキ・パロット、この人もリリースした音盤が多くて、とても全部は聴いていませんが、春らしい“Sakura Sakura”(2012)もとても良い。なにしろこのアルバムはApril In Parisから始まる! カウント・ベイシーが聴きたくなるぞ! タイトルチューンはまあ、確かにお誂え向き過ぎるかもしれない、しかしそのくらいが良いのだ、彼女のアルバムは。


さくらさくらもいいけど、この“Fly Me To The Moon”(2009)みたいなスタンダード集(↓)の方が、コンセプト盤よりも楽しいかな、結局のところ。タイトル曲はもちろん、アレサ・フランクリンでおなじみEvil Gal Bluesも、ちょっと可愛げある歌い方で素敵だ。Waltzing Matildaもナイスアレンジ。他の盤もまた聴こう。


Subtilu-Z


2021年4月24日
2021年はピアソラ生誕100周年。ここぞというタイミングで、あえて誰も知らなそうなやつを挙げてやろうと、アコーディオンやビルビネ、パーカッションによるリトアニアのカルテット、Subtilu-Zの“Strong Insertion”(2012)を紹介したい。これはなかなかマニアックだと思う。リトアニアってね、クラシックでもそうだけど、情報得にくいんだよね。このアルバムは大半は彼らのオリジナル曲だけど、ピアソラのブエノスアイレスの四季(抜粋)も収録。ヴィルトゥオージティを発揮しております。オリジナル曲以外には、エリントンのキャラバンもやってますね。珍しい編成で、響きも唯一無二だ。うーん、こういうの、良いね! スタジオではなくPiano.ltのコンサートホールでの録音、絶妙な臨場感・ライブ感もあります。


肝はこのビルビネ(Birbynė)というリード楽器、リトアニアの民族楽器で、クラリネットやサックスに近いような、面白い音色です。


ヴォーカルの入る曲もあります。Subtilu-Zは2005年にデュオでスタートし、2008年にはカルテットに。アルバムも数枚出しています。世界中で公演していますが、まだ日本には来ていないので、残念ながら日本語情報はほぼ見当たりません。ビルビネの音が聴ける貴重なバンドですので、ぜひ。↓が公式ページです。
https://www.subtilu-z.com/en


Don Covay


2021年5月1日
R&Bを広く渡り歩いたソウル歌手Don Covay、彼が組んだバンドDon Covay & The Jefferson Lemon Blues Bandの3枚のアルバムのうち知名度ナンバー2(多分)の、“Different Strokes For Different Folks”(1972)を。ブルース・ファンク、こういうのも良いんだよねえ。堪能しましょう。上のAmazonのリンクは2016年の原盤ジャケ写を使用したデジタルリマスター版ですが、僕は1992年再発のSky Ranch RecordsのCDで聴いています。まあジャケは上の方が素敵だな(笑) “Bad Luck”はBuddha Brandの名曲「ブッダの休日」で絶妙なサンプリングがされていますね。ドン・コヴェイとブッダ両方好きな人は気付く……かもしれない(笑)


70年代のドン・コヴェイをもう一つ挙げよう。“Funky Yo Yo”(1977)、これ、70年代にしては音が古臭いので過去の未発表音源なんじゃないかという説もありますが、ソウルフルな歌は十分楽しめます。なお、これは2006年の再発、ボーナストラックには上のDifferent strokes…のB面も収録。暑い日にも合うねえ、こういう音楽は。


Jazz Q


2021年5月8日
この「土曜の夜」コーナーでは、なるべくなら、あまりジャズ・ジャイアントを取り上げたくないというか、どうも取り上げるのは躊躇しているというか。もちろん名盤は大好きなんだけど、どうにもマニア路線で始めてしまったので、そういう超有名盤を挙げるのは逆に身構えちゃうというというか、できれば毎度毎度「なにそれ?」と思われるようなのをツイートしたい。オタクの性である。ということで、チェコの音楽発展に大いなる貢献をした鍵盤奏者・実業家のMartin Kratochvilが率いるバンド、Jazz Qの(多分)最新盤“Znění & snění”(2020)を聴いてみよう。インパクトのあるジャケだと思ってたら、もっとインパクトあるVoが飛び込んできた、すげー。これはマジで、すごいっすよ。

リーダーで鍵盤のMartin Kratochvilと、クセの強いヴォーカルはJana Koubková、この人は掘り下げたら面白そうだ。キスヤナ・コブコヴァ、チェコのバーバラ・ムーアと称えられる国民的ジャズシンガーだそう。御年76歳。もっと聴いてみよう。ギターはTony Ackerman、サックスがJoe Kučeraというメンバー。


Jazz Qの有名所は、コロムビアの「東欧音楽紀行」シリーズとして昨年リマスターが出た“Symbiosis”(1974)なのかしら。この辺のリスナー内での人気や知名度の事情はさっぱりわからないが、それはともかく、カッコいいジャズロックだ。最近『ソ連メロディヤ・ジャズ盤の宇宙』という本も出ましたが、民主化前の東欧近辺ジャズもまた様々な制約下で独自の発展を遂げたそうです。うーん、これも掘り下げたらすごい世界なんだろうなあ。


柴田聡子


2021年5月15日
久々の邦楽。なんか疲れたときには、シンガーソングライター/詩人の柴田聡子を聴くのも良いものである。なんて、偉そうに言ってごめんなさい。2015年の3rdアルバム「柴田聡子」、今聴くなら間違いなく「ぼくさつ」である(注:このツイートは東京オリンピック直前のものです)。しかしねえ、まさかこんな世の中になるとはねえ……。まあ「ぼくさつ」に限らず全部好きだけどね。「ニューポニーテール」も「ファイトクラブ」も「あさはか!」も好きだなあ。曲も詩も、ジャケットも! このジャケいいよね、かわいくて。だいたいこういうジャケットって、ギター持った女の子の背景にひまわり畑とかさ、何か花咲いてたりするじゃん。ないもんね、花。草ぼーぼーじゃん。何これ、手前の草。笹? 笹とか生えてるよね。青空でもないし。曇ってるし。そこがいいんだよなあ。

↓の盤は岸田繁や山本精一、伊藤大地らも参加している4thアルバム「愛の休日」(2017)、グッと幅が広がってこれも楽しい。名曲「後悔」はMVも素敵だけど、森、道、市場2018でのLive映像が良かったわ。


「がんばれ!メロディー」(2019)も、他のCDも大体全部好きよ。ポップさと、緊張と弛緩。「結婚しました」の歌謡っぽさ、たまらんよね。そういや最近マツダの軽って見ないな。「いい人」も好き。「東京メロンウィーク」も「ワンコロメーター」も、何の事か知らんけどね、好き。たまに聴きたくなるね。たまにね。


Francisco Mora Catlett


2021年5月22日
つい先週、復刻盤が出て話題沸騰している(してない)、サン・ラ・アーケストラの元ドラマーFrancisco Mora Catlettの“Mora!”(1986)。2005年の通称Mora! IIの8曲も入った完全版。「汎ラテン・スピリチュアル・ジャズ」のキャッチも納得、楽しい1枚。モラいわく「アメリカ大陸におけるアフリカの遺産の存在を明らかにする」ことを意図していると。そういう熱い信念、いいっすね。これぞポストバップの価値!ってやつか? いや知らんけど。とにかく時間にしろ空間にしろ、幅広い南中北米ジャズの統合を目指そうというアルバム、さすがに聴き応えがある。“Afra Jum”を、Far Out Recordings公式YouTubeでどうぞ。


他にも“Rumba Morena”は高速アフロ・キューバンのパーカッションと彩るフルートやスティールパン、そこにシャレオツなピアノで熱い。“Samba de Amor”や“Amazona”のサンバもアガるし、北米好きはケニー・コックスのサックス冴える“Five A.M.”も。あと僕も詳しくはないけど、実はこの中で南北ブレンド色濃いのって“Old Man Joe”なのでは?


The Coral


2021年5月29日
祝!The Coralが2018年以来となる10枚目のスタジオ・アルバムをリリース! The Coralはリヴァプールのインディーロックバンド。久々にセルフタイトルの1stアルバム(2002)を引っ張りした。流す。We’ll set sail again! We’re heading for the Spanish Main! くー!たまらん!! 昔よく聴いていたバンドで、久しぶりに1st聴いたらめっちゃアガるわー。↑の名盤“Magic and Medicine”(2003)も良いけど、個人的には“The Invisible Invasion”(2005)も思い出深いというか、よく聴いたなあ。特にM6“In the Morning”、この曲は実は、かれこれ十数年に渡ってガラケーの頃から僕が朝のアラームにしている曲なのである。今も毎朝これで起きている。マジです(笑) ポップで少し憂鬱、暗闇から光の中へ。「大丈夫、朝になるとね」。


さて新譜の話。先月末リリースの“Coral Island”(2021)は2枚組のコンセプト盤。Disc1が「コーラルアイランドへようこそ」、Disc2が「コーラルアイランドの幽霊」、2枚で24曲、1曲が短いからスルスル聴ける。これもちょこちょこ聴いていこう。今回は久しぶりに1stアルバムを引っ張り出して聴いたら、どこかフジファブリック感があって、当時の自分の趣味嗜好に思わず納得してしまった。ああ自分ってやっぱりこういうのが好きなんだな。まあ、似たのを選びがちっていうのも、そういうものかもしれない。その当時は気づいていなかったけど、後になってちょっと客観的に見るとわかるよね。


Archie Whitewater


2021年6月5日
レア・グルーヴの名盤、Archie Whitewaterのセルフタイトル盤(1970)を聴く。ロック、ソウル、ジャズ、当時のアメリカのポピュラー音楽すべて、いいとこ取りしましたという感じ。M1の“Don’t Be Short”、なんて気分の良いギターから始まるんでしょう。ジャズワルツ風で女性ヴォーカルとヴィブラフォンが良い味出しているM3“Mist Of The Early Morning”、ブルースの雰囲気が前面に出たM6の“Country To The City”など、とにかく幅広い。ホーンはバッキングとしてもソロとしても絶妙、特にサックスは通してご機嫌。ラストM11“Hulk”は熱いファンク。好き。

そんな「好きなこと何でもやりました」的なアルバムでも、中心となるのはジャズ/フォーク系、M8“Cross Country”はその典型。この曲はMCで俳優でもあるCommonの“Chapter 13”でセンス良いサンプリングされていますね(↓)。楽しい楽しいアーチー・ホワイトウォーター、LPは稀少だそうです。


Dorantes


2021年6月12日
さあ、またまた珍しいものをチョイスします。自分がピアノを弾くからでもあるけど、クラシックに限らずいろんなジャンルで、あるいはジャンルを横断して活動するピアニストも、割と興味がある。今回はフラメンコ・ピアノの開拓者、Dorantesを取り上げよう。彼がジャズ・トリオ盤としてリリースした“El Tiempo Por Testigo… A Sevilla”(2017)。フラメンコ音楽一家に生まれ、様々な音楽を取り入れながら、独自のフラメンコ音楽を追求するDorantes。とにかくカッコいいピアノに注目です。ラウンジ系ピアノが好きな人とか、あと→Pia-no-jaC←とか、そういうのが好きな人にも結構良いかも。

ドランテと、上のトリオでベースを弾いているフランシス・ポセの両人の名義で出したデュオ盤“Paseo A Dos”(2015)も熱い。これはベースが凄い。打楽器からチェロやヴァイオリンの役割も。超絶技巧だ。


ピアノとベースのデュオはミュンスター国際ジャズフェスティバル2017にも参加、一応Live音源もあります。2015年には来日し、上のトリオの面々と歌と踊りも入れてブルーノート東京で公演したそうです。ドランテ、また来て欲しいなあ。

DORANTES-EN CONCIERTO- | Blue Note TOKYO
https://www.bluenote.co.jp/jp/artists/dorantes/2015_03/


Tampa Red


2021年6月19日
ブルースは決して詳しい訳ではないが、色々聴いていくのはとても楽しい。初夏にブルース、いいよね。なんてね、別に一年中いいんだけどね。今回は1920-30年代に活躍した「スライド・ギターの魔術師」ことTampa Redを聴こう。数少ない生前のアルバム、“Don’t Tampa With the Blues”(1961)。自身の名曲を含むソロ弾き語り、ギターと歌はもちろん、カズーも絶妙だ。素敵。

正直な話、何故これがブルースの名盤と言われるのか、よくわからなかったけども、最近ちょっと「やっぱこれ名盤なんだな」と思うようになりました。やっぱり他のアーティストについても知らないとね……何も知らないままで価値がわかるものがあれば、知識を得てから価値に気づくものもあるということで。まあ、僕もまだまだブルースは初心者です。それはさておき、1953年のRCAのセッションでは、1月の「土曜の夜」シリーズで取り上げたSonny Boy Williamson IIとも共演しています。


そんな話なども含む、やたらと詳しい30ページほどあるBooklet付きの、タンパ・レッドの後期録音(1945-53)ベスト盤、“Dynamite! The Unsung King Of The Blues”(2015)も楽しい。内容の豊富なBookletは本当にありがたい。Johnny JonesやBig Walter “Shakey” Hortonもいます。Amazonの日本語レビュー2つもとても参考になりますね。


田所あずさ


2021年6月26日
さあ、2021年も折り返し、しかも6月26日は僕の誕生日、上半期の新譜で個人的ヘビロテ大賞だったのは1月発売の田所あずさ“Waver”(2021)に決定しました!パチパチパチ! Waver(ゆらぎ)を主題に、今のころあずが感じることを全力で詰め込んだアルバム、M1「レイドバック・ガール」でもう失神するわ。やべー!やべー!これはたまんねーっすわ!最高すぎる!ありがとう!ころあず!ありがとう! 1番のサビ終わり、「ロンリよりもDope」の部分、子音の強烈なブレスアウト、こんなん悶絶するの必至でしょう。

全曲、曲も詞も歌も最高ですね。マシマシのヒーカップがたまらん。全てに「人間」らしさを感じる。中でも、忘れらんねえよの柴田さんが作詞作曲したM8「ころあるこ。」は、ご本人も超自信作と語る、本当に良い曲だと思います。


いわゆる声優さんの音楽って、まあ良くも悪くも特徴あるけど、もう最近は音楽性もものすごい曲が多くなってきてる印象ではあるのですが、この“Waver”は、その一昔前のいわゆる声優的な声質偏重の音楽の長所はMaxに活かして、逆に短所というか声優の音楽ってこんなだよねという一辺倒な退屈さは払拭した……という印象。なおこの方のnoteとそこにあるインタビュー等が最高の推薦文です。こうして生まれた真摯な音楽だからこそ、心奪われたんだと思います。本当に素晴らしい、名盤ですね。


Kid Ory


2021年7月3日
たまにはディキシーランド・ジャズを聴こう。好きですよ。吹奏楽経験者なので、まずこういう音そのものが好き。今回はトロンボーン奏者でバンドリーダーのKid Ory名義でリリースされた“Théâtre Des Champs-Élysées”(1956)、2007年のリマスター盤を。1956年12月2日のLive、聖者の行進もやってます。バンドもご機嫌、聴衆の熱気も伝わる、楽しいアルバム。もう誰がリーダーかわからないくらいの名演奏ですが、高音楽器ソロの裏で副旋律的な動きをするトロンボーン(Tailgateと言う)を主流にしたキッド・オリーですから、別にそれで良いのです。もっとたっぷりフロントマン風を聴きたいなら“Kid Ory ’44-’46”(1991)も良いですね、これはサブスクにもあるし。


Kid Oryも音盤多いからね……夜なら“Dance With Kid Ory Or Just Listen”(1960)が良いかしら、6曲だしサクッと聴ける。しかもAm I Blueから始まるのもまた良い、リラックスできるわ。ジャダや12番街のラグなど、スタンダードばかりで6曲、これを聴いてまったりしましょう。それにしてもこれ、さすが名盤と言われるだけあって、アルバム・タイトルが絶妙に良い。誰かこれに素敵な邦題を付けてください!これはセンス問われるぞ!


Leo Nocentelli


2021年7月10日
先週に続きニューオーリンズ、今度はファンクの話題。The Metersのギタリスト、Leo Nocentelliの“Live in San Francisco”(1997)。ノセンテリはジョー“ジガブー”モデリストとよくカルテット演奏しており、これは観客の録音を元にしたアルバム。録音されていることに気づかなかったノセンテリは、後日録音を持っていったその観客からDATを受け取り、実際に聴いてみて「これは出そう」となってリリースしたという。聴けばわかる、これは乗れます。ミーターズの曲がメインで、ラストは“Cissy Strut”、The Metersのセルフタイトルのデビュー盤(1969)の一曲目、代表作ですね。


今年の2月のギターマガジンの記事でレオ・ノセンテリ特集がありました。これはなかなか、大変に面白い記事でした。「なんと言ってもLabelleの“Lady Marmalade”」みたいに書かれても、いやいやいや、この曲のギターとか、さすがに渋過ぎるでしょ(笑) まあでも、こういうところに痺れるのがギターマニアの性なんだろうなと。そういう風に理解しました。僕は一般ピーポーなのでわからん。


Nathaniel Cross


2021年7月17日
新譜の話でもまたまたトロンボーン奏者を。我ながらトロンボーン好きだな。ロンドンのオルタナジャズシーンを支えるスタジオミュージシャン/アレンジャー、Nathaniel Crossのデビュー盤“The Description Is Not The Described”(2021)。ジャケに違わずCoolな音楽、これは良いぞ。だいたい、僕が「これは良いぞ」ってツイートしたときは本当に良いんだよ。みんな信じてくれよ。4曲入りEPで、ジャズを基にカリプソ、アフロ・キューバン、ヒップ・ホップ、ブロークンビーツの要素の入った、複雑な混合が楽しい。M1のGoodbye for Nowは昨年若くして他界したクロスの父に捧げる曲で、オープニングには幼少時代の父との会話音声が。レーベル公式YouTubeでどうぞ。リズム隊もホーンも鍵盤も素晴らしい。


もっと詳しい話はAll About Jazzのページで……と言いつつも、このアルバム・タイトル、クリシュナムルティの言葉からヒントを得たそうですが、2021年を反映したと語るクロス、「説明は説明になってない」なんて、音楽全般にも当てはまりそう。僕も書けば書くほど思います。だから聴いてね!


Noora Noor


2021年7月24日
オリータみたいなソウルフルな歌が聴きたいときは何を聴けばいい?そういうときはオリータを聴けばいいのだが、ついつい色んなものを漁ってみたくなるんだな。「ノルウェーのソウル・クイーン」ことNoora Noorの3rdアルバム、“Soul Deep”(2009)を聴きましょう。2009年とは思えないファンキーなタイムスリップ感と、力強い歌声! とりあえずYouTubeで同盤のM1“What Man Have Done”をどうぞ。歌声も良いけど、これは歌詞も良いよね。なんなら曲も良いんだ、Corey Harris & Henry Butlerのカヴァーです。ノーラが歌うともっと別の意味にも聞こえる。ドバイ生まれ、11歳でノルウェーへ、15歳でワーナーと契約。すごい。


北欧では有名だそうで、ミュージカル映画の主題歌ではNe-Yoともコラボした音源もあるそう。僕は見つけられませんでしたが。世界的な人気の割に日本では無名ですね、呼ばれもしないしね。ちなみに、全く意図してなかったけど(本当だよ)、ちょうど1年前くらいにオリータ・アダムスを土曜の夜で取り上げていました(笑) なんでか知らんが、この時期になるとこういうのが聴きたくなるらしい。おとなしくオリータを聴くべし。


Army of Freshmen


2021年7月31日
あまりロック系ポップスは取り上げる頻度が低くて、好きなのになんか申し訳無いなあ……という自覚はあるので、思い立ったが吉日でたまには登場させる。夏は爽やかにパワー・ポップが聴きたくなるものなのだ。カリフォルニア州出身のロックバンド、Army of Freshmenの、愛すべきメロディアスな4thアルバム“Under the Radar”(2006)。ピアノが煌めくM1“Wrinkle In Time”、シェイクスピアも恥じらう青春ソング“Juliet”、うーん、たまらんね。僕もキラキラしていた(本当だよ)若い頃を思い出しちゃうね!

この手の00年代エモ・バンドというのは、個人的に超好きでめっちゃ聴いてた(いくつかは今も聴いている)んですけど、何しろ非常に狭い音楽的条件下のメイキングを強いられた結果、持て囃された1枚か2枚のアルバムの後はもうどうしようもなくなって、バンドは迷走して解散しがち、なんですよね。でも、AOFは全くもってブレずに、ずっと同じパワー・ポップをやり続けて現在に至る、すごいよ。本当に尊敬するわ。「曲が全部似てる」とか「ただ爽やかなだけ」とか、そういう無粋なことを言うなよ君たち、それってすごいことだよ。例えば7枚目のアルバム“Happy to Be Alive”(2013)を聴いてみたまえ。うーん、全部似てるし、全部爽やかだな。


1stアルバムの“The Army of Freshmen”(2001)も好きだったな。「Weezerのようなギター、The Carsのようなキーボード、Beach Boysのようなコーラス」と評されたAOF、まさしく。なおヴォーカルのクリスはあるとき新聞に「マイク・ラブはオリジナルメンバーがほぼいないのにBeach Boysを騙り過ぎだ」と投書し、後にマイクから訴えられたというナイスなエピソードを持っている。なんじゃそりゃ(笑) ちなみに和解済みだそうです。良かったね。


Rusconi + Fred Frith


2021年8月7日
たまにはわけわからんものを聴きたくなるし、ポップなのも好きだけど、そういうとんがったのも案外好きなんですよ。ということで、スイスのやばいアヴァンギャルド・ジャズ・ピアニストであるStefan Rusconiのバンドが、こちらも負けず劣らずやばいギタリスト、Fred Frithと共演したLive集、Rusconi + Fred Frith名義の“Live in Europe”(2016)を挙げたい。ダークでポップでロックな、なんとも言えない雰囲気。こういうのが良いんじゃ。アルバムには“Chihiro’s World”と“Kaonashi”という『千と千尋の神隠し』をモチーフにした曲も。日本人が取り上げるとなんか微妙かもしれないけど、海外イキリ芸術家(失礼、でもそうでしょ、逆もしかりだしね)には、ジブリの持つ日本らしさは、やはり良い題材なんだと思いますね。前者は2012年のチューリヒ、後者は2014年のハンブルクLive、もちろんフレッド・フリスではなくRusconiの方の持ち込みです。“Chihiro’s World”はアルバム“History Sugar Dream”(2014)にも収録。


最初のLive盤でもやっている“Berlin Blues”や“Alice in the Sky”、“Tempelhof”、そして“Kaonashi”は2012年のアルバム“Revolution”に収録。ルスコーニは自身のバンドの音楽性をÜberjazzとかmodern creative musicと語ります。こういう人たちの音楽、どうせ取り上げてもね、Twitterでもブログでも、大した反響なんてないんですけど、でも僕、実はこういうの結構好きなんですよね。怖いもの見たさみたいなのもあるけど、普通に面白いと思う。



土曜の夜はクラシック以外の音楽の話~その1(2020年7月17日)
土曜の夜はクラシック以外の音楽の話~その2(2020年12月8日)
土曜の夜はクラシック以外の音楽の話~その3(2021年2月16日)
土曜の夜はクラシック以外の音楽の話~その4(2021年5月19日)
土曜の夜はクラシック以外の音楽の話~その5(2022年6月3日)


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Author: funapee(Twitter)
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