バッハ マニフィカト:宗教曲へのアプローチ

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Magnificat / Wachet Auf

バッハ マニフィカト ニ長調 BWV243


余程好きな人でなければ、バッハの宗教合唱曲を普段から聴くという人はいない。
名曲と言われる「マタイ受難曲」「ヨハネ受難曲」「クリスマス・オラトリオ」などは、通して聴くと2,3時間あり、しかも内容も重いので、なかなか難儀である。
そこで、誰でも手軽にバッハの宗教合唱作品に触れることができる入門編として、この「マニフィカト」は堂々と君臨する。
12曲あるのだが、通して聴いても30分程で(こういった宗教曲は、一連の筋があるので、通して聴くということが非常に重要で、抜粋で演奏されることがあまりないのはそういう理由である)、何より聴いていて疲れない、非常に素朴で朗らかな曲だ。しかもニ長調である。
内容を簡単に言うと、受胎告知されたマリアが喜んで神を讃えるというもので、明るくて当然なのだ。
独唱と合唱、トランペット、ティンパニ、フルート、オーボエ、オーボエ・ダモーレ、弦楽合奏、通奏低音という編成で、それぞれのパートが個々によく活躍するので、聴いていて飽きがこない。
合唱の力強さ、独唱の美しいアリアはもちろん、オーボエ・ダモーレとソプラノの絡み合いが美しい第3曲も良いし、トランペットの超絶な活躍ぶりには惚れてしまう。
個人的には第5曲のバスのアリアがたまらない。


もともとは、1723年のクリスマスの晩課のためのもので、初稿では曲数も少し多く、変ホ長調だった。
歌詞はバッハには珍しいラテン語の引用だが、ニ長調に改訂されてから、ライプツィヒではルター翻訳のドイツ語版が毎週水曜日と土曜日の晩課で歌われていたようである。
ラテン語版も、Weihnachten(降誕祭)、Ostern(復活祭)、Pfingsten(聖霊降臨祭)などの重要行事で歌われていた。
肝心の歌詞だが、「新約聖書」ルカ伝第1章第46~55節からの引用である。気になる方はこちらへ(そのうち僕の翻訳も載せる予定です)。ちなみにマニフィカトとは崇めるという意味である。
さて、僕はクリスチャンではないが、キリスト教を知らない人でも、惹きこまれるような魅力を持っているのが大作曲家たちの宗教曲である。
そしてその中でも、やはりバッハは格別と言わねばならない。
西洋音楽の歴史で彼ほど神に音楽を捧げてきた人はいないからだ。
その彼の宗教曲を紐解き理解するのは、簡単なことではないし、僕もまだまだ到底理解できそうにはない。
だがその入り口として、「マニフィカト」は本当にいい役割を果たしてくれる。
なぜなら、この重すぎないバロック音楽を純粋に楽しむだけで、より高度な音楽の楽しみへと導いてくれるからだ。
重くない、ということは、同時にまたバッハの深奥でもない、とも言える。
だが、「珠玉の名曲を楽しむ」と考えた時、それは今は気にすることではないだろう。

Magnificat / Wachet Auf Magnificat / Wachet Auf
Dietrich Fischer-Dieskau,Johann Sebastian Bach,Karl Richter,Hertha Töpper,Munich Bach Orchestra,Edith Mathis,Maria Stader,Peter Schreier,Ernst Haefliger,Munich Bach Choir

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