世の中のクラシック音楽ファンは有名海外オケの来日で盛り上がっていますが、小さい子どもとの時間を可能な限り共にすべく、今は平日昼のコンサートに行くのがメイン。ベルリンもウィーンも指をくわえて見てるだけ……という妬ましい話は一旦置いておいて、たまたま行った昼の池袋のパイプオルガンコンサート、とても楽しかったです。
【東京芸術劇場 ランチタイム・パイプオルガンコンサートVol. 154】
(2023年11月16日、東京芸術劇場)
J. S. バッハ/コラール「最愛のイエス、私達はここに集まり」 BWV 731
J. S. バッハ/前奏曲とフーガ ロ短調 BWV 544
G. ウォーカー/コラール前奏曲「最愛のイエス、私達はここに集まり」
P. エベン/『聖日曜日の音楽』より 第3曲 「モート・オスティナート」
オルガン:龍田優美子
前半はバッハ、後半は20世紀作品。芸劇のパイプオルガンというと、あのいかつい見た目の銀色のオルガンを想像しますが(まどマギのコンサートを芸劇で聴いたときはあまりに雰囲気に合ったデザインでちょっと感動さえした)、今回はバロックタイプのオルガンが置いてある、というか、客席側を向いていました。チューニングもA=415Hzだそう。オルガンの龍田さんはミッション系大学の専属オルガン奏者もしている方で、またアメリカの大学でオルガンで博士号取った方とのこと、期待も高まるバッハ演奏。柔らかい音色で、昼からバッハのコラールが降り注ぐ、良い時間でした。前奏曲とフーガも圧巻。
これからオルガンを回転させますとアナウンスが入り、バロックからモダンへぐるっと一回転。ゆっくりと、重さ70トンあるというオルガンが回転する様子は、なんかそれだけで迫力あります。何しろ見た目もね、迫力あるからね、芸劇のオルガンは。モダンオルガンで後半へ。A=442Hz。まずはジョージ・ウォーカー(1922-2018)のコラール前奏曲。バッハと同じ「最愛のイエス、私達はここに集まり」ですが、かなり雰囲気が違う、というか、穏やかではあるのですが、どこか不思議な響きで、本当にこういう曲なのかもわからず、狐につままれたような感じ。とても面白かった。色んな曲があるんだなあ。最後はチェコの作曲家、ペトル・エベン(1929-2007)、モート・オスティナートという曲で、こちらはウォーカーのコラール前奏曲と違い動きの激しい曲。オルガンのコンサートって、僕、経験が少なくて知らないのですが、ストップを操作する助手さんみたいな人がいて、合わせて動かしてくれるんですね。譜めくりの人みたいな。現代の作品だとそういうのも多いのかしら。この曲は善と悪の力の戦いを描いているそうで、様々な音色や音の高低で戦っていました。これが面白い。徐々に激しくなるんだろうなと予想されましたが、やはり後半になって、ドスの利いた低音がブワーっと鳴ると迫力満点。これは録音じゃなくて生で浴びられる喜びが大きい。すごかった。多分客席も、ほとんどの人が知らない曲だったでしょうし、バッハみたいにわかりやすいメロディでもないけど、後半2曲の選曲のセンスというか配置というか、とても良かったと思います。こういう曲もあるんだよと、楽しくプレゼンテーションしてもらった気分。いやあ、良いコンサートでした。これ、Vol.154ってことは、もう芸劇でずっとやってるんですかね、全然知らなかったわ。平日昼のコンサート行くようになったおかげで発見できました。
都内在住のクラシック音楽ファンです。コーヒーとお酒が好きな二児の父。趣味は音源収集とコンサートに行くこと、ときどきピアノ、シンセサイザー、ドラム演奏、作曲・編曲など。詳しくは→more