ディアンス トラベリング・ソナタ:出発はプレゼント開けるみたい

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ディアンス トラベリング・ソナタ


春は旅立ちの季節でもある。みたいな話題は3月にしたら良かったが、4月になってしまった。旅立ちであり、新たな一歩を踏み出す季節だ。しかし皆様、ご安心ください。このブログは特に変わる予定もなく、今まで通り適当に続けていきます。多分。
ということで、旅にちなんだ曲、ローラン・ディアンスの「トラベリング・ソナタ」を挙げよう。ローラン・ディアンス(1955-2016)はチュニジア出身、フランスで活躍したギター奏者、作曲家。クラシック・ギターの分野では知らない人はいないというくらい、影響力のあった人物だ。彼のギター独奏曲「タンゴ・アン・スカイ」は昔トヨタのCMで村治佳織さんが弾いていたので聴いたことがある人がいるかもしれない。他にも素敵なギター作品が多々あり、録音も豊富なのでぜひ聴いてみてほしい。


今回紹介する「トラベリング・ソナタ」はギターとフルートのデュオ曲。フルートの代わりにヴァイオリンでも可。タイトルの通り、ディアンスが2007年に旅先で作曲した音楽だ。3楽章構成で、それぞれ都市の名前が付けられている。
第1楽章はBellinzona(ベリンツォーナ)、スイスの都市。スイス政府観光局によれば「ティチーノ州の州都。イタリアからのアルプス越えの拠点として戦略的に重要な位置にあり、古くから栄えた歴史的な町です。3つの古城と町を取り囲む城壁が世界遺産に認定されています」とのこと。個人的には、ギターの独白から始まる中間部がちょっとオシャレで素敵だと思う。コード進行も気が利いている。フルートのフラッターは何なんでしょう。よくわからない地なので何のコメントもしようがないが、動きのある楽章で、デュオ同士の対話も面白い。
第2楽章はMottola(モットラ)、イタリアの南部、ターラント県にある小さな町。全く知らないが、中世の教会や大聖堂が残っており、旧市街は観光地でもあるそうだ。へー。Quasi Adagioで始まる緩徐楽章、そんな時間旅行も出来てしまいそうな瞑想的な趣きも多少はある。しかしここでもやはり、聴く者の情緒をくすぐる感動的な和声がさり気なく配置されている。
第3楽章はAnkara(アンカラ)、トルコの首都、ここでいきなり有名な大都市に。Ritmicoの指示があるようにリズミカルで、先の2曲に比べるとちょっぴりオリエンタルな雰囲気。ギターのソロ部分はさすがローラン・ディアンスと言ったところ。ソロ後のフルートのメロディも優美で良い。結構、歌がはっきりしているので、現代作品はちょっと……と敬遠しがちな方でも楽しめると思う。冒頭のリズミカルな主題が回帰して、最後は両者がスラップ(?)のような奏法と、何か声(言葉)を発して終わる。
どの楽章も6分ほど、しめて18分。通して演奏しても良いし、抜粋して演奏会に用いるのも良さそうだ。アンカラはきっと最後盛り上がるし、客席も笑顔で終わるだろう。

Bellinzona 掲載元:Wikipedia
Mottolaの大聖堂 掲載元:Wikipedia
Ankara 掲載元:Wikipedia


なぜこの都市が選ばれたのだろう。旅の思い出、ということなのだろうか、わからないが、非常に私的で親密な音楽であるように感じる。そういう音楽性と、フルートとギターのデュオというのは、ぴったりな組み合わせだと思う。ディアンスは旅先それぞれの思い出について詳しくは語っていないが、この曲の誕生にあたって3人の人物に謝辞を述べており、一人は出版社のディレクター、また一人は依頼者(Arc Duo)と作曲家を繋いだアメリカのチェリスト、もう一人はディアンスの友人のフルート奏者である。もしかすると、3人が3都市と関係あるのかもしれないし、ないかもしれない。
知らないことばかりでブログ書いちゃったが、まあいつもそんなもんかも……。この曲のことも、知らない音楽ファンの方が多いでしょう。世界中にはまだ知らない「知らない」が沢山あって、ときめきは大事なパスコードで、案外なんでも楽しめちゃうもんなんですよ。春は旅立ちの季節、ディアンスのトラベルリボン、じゃなかった(これが言いたいだけ)、トラベリング・ソナタを知った方はぜひ、まだ知らない音楽の世界に旅立ってみてください。未知なる音楽はすぐそこ、そのスマホのすぐ先に広がっていますよ。出発はプレゼント開けるみたい、パッと開けてガッと飛び込みましょう。

ギターとフルートによるヨーロッパ音楽の旅 (Traveling Sonata ~ European Music For Flute & Guitar : Faure ・ Ravel ・ Borne ・ Satie ・ Dyens ・ Duplessy ・ Ourkouzounov / Viviana Guzman (flute), Jeremy Jouve (guitar)) [輸入盤]
ヴィヴィアーナ・グズマン (アーティスト), & 10 その他


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Author: funapee(Twitter)
都内在住のクラシック音楽ファンです。コーヒーとお酒が好きな二児の父。趣味は音源収集とコンサートに行くこと、ときどきピアノ、シンセサイザー、ドラム演奏、作曲・編曲など。詳しくは→more

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