アイカツ!のCDについて語る その14

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【序文】
このブログは基本的にはクラシック音楽について語るブログだが、どうしても記しておきたいと思うに至ったものについては、ここに記録して残しておこう。つまり、アニメ「アイカツ!」の音楽はそれほどに素晴らしい音楽であることは保証したい。ポップミュージックの進化の歴史の最先端は常にアニソンなのだ。なお、前提として、僕はクラシック音楽オタクではあるがアニソンオタクでもないし、アニメオタクでもないと思っている。実はスターズから見始めたにわかなので、スターズ曲紹介記事を2017~2018年に書いてから、2020年、この無印アイカツ曲紹介を書き始めた。スターズ曲と違ってネット上でも紹介記事は多いので、内容かぶったらゴメンナサイ。あ、ネタバレ注意。


TVアニメ/データカードダス『アイカツ!』2ndシーズン挿入歌ミニアルバム2 CUTE LOOK
01:ハッピィクレッシェンド
歌:わか・ふうり・すなお・れみ・ゆな・えり from STAR☆ANIS
作詞:辻 純更 作曲・編曲:石濱 翔(MONACA)
02:オトナモード
歌:りすこ・もな from STAR☆ANIS
作詞:林奈津美 作曲・編曲:成瀬裕介
03:stranger alien
歌:ふうり・ゆな from STAR☆ANIS
作詞:只野菜摘 作曲・編曲:岡部啓一(MONACA)
04:アラビアンロマンス
歌:えり・わか from STAR☆ANIS
作詞:こだまさおり 作曲・編曲:永谷喬夫
05:ハートのメロディー
歌:えり from STAR☆ANIS
作詞:神田怜鴎 作曲・編曲:大西省吾
06:ダンシング☆ベイビー
歌:ゆな・えり from STAR☆ANIS
作詞:渡辺なつみ 作曲・編曲:浜渦正志
07:フレンド
歌:わか・ふうり from STAR☆ANIS
作詞:やまだ麻実 作曲:山﨑佳祐 編曲:南田健吾
08:KIRA☆Power 〜ドリームアカデミー Ver.〜
歌:ふうり・ゆな・えり from STAR☆ANIS
作詞:畑 亜貴 作曲・編曲:石濱 翔(MONACA)


アイカツ2年め(2ndシーズン)で使われた曲の半分がその13で書いたPOP ASSORTに収録され、もう半分がこちらのCUTE LOOKに収録。なぜか踊れるEDMが多めで、1曲だけアニメ未使用(データカードダスのみ)の曲もある。ジャケットはいちご&セイラだが、反対側ではちゃんと、あおい&きいが見張っているぞ。


ハッピィクレッシェンド
「ハートのボリューム急上昇」というフレーズが耳に残る、2年めを象徴する曲の一つ。このCDでは歌唱担当わかがいちご、歌唱担当ふうりがあおいとセイラ、歌唱担当すなおが蘭とそら、歌唱担当れみがおとめ、歌唱担当ゆながきい、歌唱担当えりがマリアと、6人の歌手が8人のアイドルとして歌う。アニメではドリアカ4名が歌う「ドリアカ曲」の印象が強い。MONACA石濱翔による定番4つ打ち、心も身体も踊りだしちゃう。ピコピコ音も可愛いし、サビの入りではチャイムも聴こえる。直接キンコンカンコンでなくとも、学校生活らしさがさり気なく現れて素敵だ。メロディーラインのシンコペーションも心が弾む様子のよう。案外キメも多くてキレキレ、若者らしい雰囲気。歌詞も良い。スターライトとドリアカが互いに自慢したり褒め合ったり、一緒だと私達のハートのボリュームが急上昇だねという、同じ夢を持つ仲間っていいねという、超前向きでアイカツらしい。ちょっとクラシック音楽的な話をすると、音楽用語のクレッシェンドは「だんだん強く」の意味だが、語源はcrescere、育つという意味で、その現在進行系から来た言葉。今まさに楽しみながら成長しつつあるアイドルたちにぴったりだ。


オトナモード
これは超名曲。夏樹みくる(歌唱担当もな)の曲で、このCDでは美月さん(歌唱担当りすこ)と一緒に歌うWMバージョン。みくるはVivid Kissというポップでカラフルで元気の良いブランドを着るので、84話のみくる初ソロはてっきりポップな曲(スターズから見た民なので二階堂ゆず的な曲)が来ると想像していたら、アダルトな音楽に衝撃。そっちか!お姉さん系か!と、ギャップに弱いので一気にみくるのことが好きになった。確かに周りのキャラより年上だが、圧倒的年長者感のある美月さんに比べ、どこかライトな雰囲気のみくるには、然程お姉さんっぽさを感じていなかったが、過去のアイカツ曲にはない大人な音楽で「やっぱお姉さんじゃん!」と思い知らされた。R&B系が強い曲って蘭のTrap of Loveくらい? オトナモードは曲も歌い方もR&Bを軸に、ベースがしつこいくらいレゲエのリズムパターンを足して「オトナ感」の演出に一役買っている(余談だが僕は一度だけボブ・マーリーのコピーバンドに誘ってもらってドラムをやったことがあり、レゲエのグルーヴを作るのに苦労しつつも、めちゃくちゃ楽しかった思い出がある)。シティ風味を増すキレイめなピアノの音色と、レゲエ風味を増す鉄板のハモンドの音色、素敵だ。歌詞もエグいくらいに一歩大人の階段上ってますよアピールが強い。「ママには内緒のオトナモード」って、いかんでしょ……そんなステージ見せられてさ、「みくるのミラクル、見せちゃおうか~なっ!」って言われたらもうダメよこれは、だって見たいもん、みくるのミラクル。「カワイイじゃ足りないの」なんだろ、なあ見せてくれよ、みくるのミラクル!もちろんいやらしい意味で!……なんてね、でも本来いやらしい意味で問題ない音楽のはずで、そこはアイカツ的健全性フィルターのおかげで「子ども向け大人モード」という面白い音楽になった。Cメロの歌詞、「こんなトクベツな夜」なのに「もうすぐおうちに帰るから今だけ主役で」って、お持ち帰りとかされないのが良い。ちなみにこういう音楽、僕は新潟出身なのでここは新潟が生んだR&Bの歌姫DOUBLEを推したいけど、もっと厳密に近づけるなら中島美嘉がORIGINAL LOVEの「接吻」をラヴァーズ・ロック風にカヴァーしたやつが、ちゃんとレゲエ風味もあって近い。しかしまあ、女児向けという体裁や制約があるラヴァーズ・ロックなど世の中にはそうそうないだろうし、絶妙な塩梅の曲として仕上がった「オトナモード」は、アイカツ曲の中でも傑作の一つだと思う。まさにミラクル!



stranger alien
アイカツ記事もその14まで読んでくださっている方は、僕が霧矢あおい推しだとご理解なさっていると思いますが……この曲はprism spiral以来のあおい曲で、本編では90話、ステージではなくMV撮影で使われた曲。アニメでMV撮影の話なんて、これしかないよね?ということで、MVありきなんです。だからこんな文章読むよりアニメ見た方がいいんだわ、めっちゃかわいいから。あのプリズムサイバーグラフィックコーデも着るし、必見。さあ、大事なことはきちんと言ったので、音楽の話をすると、とにかく「2曲目はパワーアップする」アイカツシリーズあるあるに則り、この曲もprism spiral以上に、あおい姐さんのブランド「フューチャリングガール」の未来らしさを強調した曲になっている。使われている音色の透明感もさることながら、とにかくSE的に入る様々な音が「ヒューン」って感じにポルタメント(ピッチベンド)していて、まるで宇宙船がワープ移動しているような雰囲気だ。こういう音使いをする曲は無数にあるけど、僕はスーパーカーの“Sunday People”を思い出す、MVも宇宙っぽさあるし。stranger alienもエイリアンと言うだけあって宇宙っぽさがあって然るべき、歌詞でも「いつかは宇宙へも 旅をしてみたい小粋な地球人 どんな服で星へ飛ぼう」と言っている。そんな宇宙的・近未来的な雰囲気が全面に押し出された4つ打ち、Cmaj7とFのリフもクセになる、良い曲だ。このCDではあおい(歌唱担当ふうり)ときい(歌唱担当ゆな)が歌っていて、実はあおいソロバージョンはshortサイズしか存在しないのが悔しい。MV撮ってるのに……。ちなみに僕は世代なので、この曲でカードキャプターさくらの最初のOP曲、Catch You Catch Meを思い出してしまった。全体の雰囲気も似てるけど、特にサビが似てる。別にCCさくらオタクではないが(好きだけどね)、思い返せばCCさくらにも大概、人生狂わされたものだ。でなければ今こうして、アイカツ楽曲レビューなど書いていないだろう。



アラビアンロマンス
ドラマ回である本編85話「月の砂漠の幻想曲(ラプソディ)」で使われた曲。一応クラシック音楽ブログなので書いておくが、幻想曲はファンタジーでありラプソディではない。しかもドラマのタイトルはちゃんと「月の砂漠の狂詩曲(ラプソディ)」となっており、わざと85話のサブタイトルで幻想曲としてラプソディと読ませているのか、謎だ。曲自体はオリエンタルな雰囲気のダンスミュージックで、いかにも風沢そら(歌唱担当えり)にぴったり、ドラマの内容にもよく合うのだが、なぜか蘭ではなくいちご(歌唱担当わか)と一緒に歌っているという、これもまた謎。謎の多い曲だな。ただ、いちごちゃんのおかげでマイルドな仕上がりに。風沢だけだとセクシー路線突っ走りそう、えりはそういう歌も得意だろうし。この曲のようなアラビア風EDM、僕はさほど聴かないけども、中東のジャズは好きなのでよく聴く。以前Twitterでもレバノンのサックス奏者Toufic Farroukhのアルバムを紹介したし、その↓のツイートのツリーを辿るとイブラヒム・マーロフも出てくる。「アラビアンロマンス」でも(多分)用いられているアラビア音楽の楽器、例えばウード、カーヌーン、ナーイ、あるいはシタールなんかも登場するジャズセッションなので、興味ある方はぜひ。なお、この曲のAメロで聴こえる弦楽器系のオブリガート、楽器の特定はできないけど、アラビア風を醸し出しながらもキックのビートに乗ったアクセントが心地よくて、超好き。作編曲は永谷喬夫氏、さすがギタリスト。



ハートのメロディー
爽やかな女性シンガーソングライターがアコギ抱えて歌っている、そんな光景が目に浮かぶ曲。このCDでは歌唱担当えり(マリアとさくら)が歌っていて、えりの甘くてコクのある声質がこの曲の雰囲気に抜群に合う。一方で、この曲はあかりちゃん曲というイメージのファンも多いことだろう。アニメでは97話のあかりちゃんステージで一度だけ登場、あかりソロver.(歌唱担当るか)はショートサイズのみ存在。この辺はアニメ2年めから3年めへの橋渡し的なクライマックス、内容的にも非常に重要な話が続くところで、あかりちゃんの成長を象徴するステージで「ハートのメロディー」が使われた。あかりちゃんの声優を務めた下地紫野さんも思い入れある曲の一つとして挙げているそうだ。音楽はシンプルだが細かなこだわりも感じられる丁寧な作り。女性SSWを彷彿とさせるが、これといって誰か特定の人が思いつなかい。あいみょんやmiwaとも違うし、シェリル・クロウやアラニス・モリセットとも違う。まあ、詳しい人なら思い当たるのかもしれない。ただ僕が思うに、この曲が好きな人は、きっと僕のお気に入り女性SSWの一人、リンダ・ルイスの“Lark”を気に入ってくれるはず。Spring Song、Reach for the Truthを聴いてぐっときたら聴き進めてほしい。ハートのメロディーの話に戻るが、この曲の凄いところは歌詞である。歌唱担当えりバージョンで聴けばどの部分もラブソングとして聴ける。しかし、あかりバージョンだと、例えば1番サビ前の「かんちがいしないで 特別じゃないの わたしは普通のオンナノコ」も、自分は現主人公である天才星宮いちごとは違う普通の女の子ですという大空あかりの心情や、2番サビ前の「鏡に映ってる わたしのフリしたわたしに気づいてくれた君」も、本当の自分を見失っていることに気づかされた大空あかりの言葉に思えてくる。それがあっての、サビの「だからホントのわたしを見てプリーズミー」に繋がるという。素晴らしい歌詞だ。そうした歌詞の二面性も、シンプルかつ上質な音楽があるからこそ成り立つのだということは指摘しておこう。



ダンシング☆ベイビー
アニメ未使用曲で、データカードダスのみ登場。歌がゆなとえりなので、紫吹蘭と風沢そらだと思われる。とにかく、収録曲中、いやもしかすると全アイカツ曲中で最も変態的な楽曲かもしれない。だからアニメ未使用なのかは知らないが、まあ使い所がなかったのかも。もう1年あって、紫吹&風沢ステージがあればできたかな。しかしまあ、やたらめったら凝った曲で、到底女児アニメ曲とは思えない。音色や使用楽器も通り一遍ではなく、リズムやビートもあえて外してきて、バスドラは荒れ狂い、ヴァイオリン・ソロまで入るという。誰の曲かと思えば作編曲は浜渦正志だった。なら仕方ない。でもこんな大物をアニメで活かせないのはもったいないな(笑) 凄い凄いと絶賛する人は一定数いそうだが、あくまで個人的な好みとしては、変わったことしてる感がもろに伝わってしまうというか、変態過ぎて興ざめというか、デートに恋人がパリコレみたいな服着て来ちゃったみたいな、凄すぎて楽しめないのが正直な感想。こういう凝ったエレクトロニカみたいな音楽自体は結構好きだし、「Signalize!」は楽しめるのになぜこれは楽しめないのかちょっと考えたりもした。あるいは、同系統のオリエンタルなEDMならアラビアンロマンスの方が純粋にポップスとして楽しいと感じるし、逆にもっと緩い曲も大好きで、作り込まれているとしても「8月のマリーナ」の記事で書いたような、凝っているのに決して出過ぎないアニソンは大好きだし……。「ダンシング☆ベイビー」もアニメに使われて意味を持たせられたらまた別の感想かも。アーティスティックな意味では飛び抜けた曲でも、アニソンとして愛せるかどうかはまたちょっと違う話だ。でも単純に浜渦さんの音楽が好きな人は絶対楽しめると思うし、紫吹風沢ペアが好きな人は、アイカツにおいては彼女たちでしか表現し得ない危ういドープさを味わうことも可能な曲だ。


フレンド
2年めのラストで使われる、いちご(歌唱担当わか)とセイラ(歌唱担当ふうり)によるユニット、2wingSの曲。多くのファンがこの曲のステージで感動したことだろう。僕はあおい推しなので、実はちょっともやもやしたりするんですが(わかるでしょ?きっときいちゃん推しの人も同じでは?)、まあそれは置いておくとして、2年めのテーマの一つであろう「仲間」や「友情」の総決算的な曲になっている。イントロなしで歌が始まり、その歌がいちごもセイラも張って歌うので、そっちばかり聞いてしまうのだが、バックをよく聴くと、これはなかなか、上質なハウスで素敵だ。アイカツ曲はハウス風の曲が多い気がするし、「フレンド」はその中でも割とクセの少ないオシャレな方ではないか。ちゃんとピアノのコードのリフもあるし、BPMも程よく心地良い。特徴的なのはサビを中心に炸裂するホーンセクションで、以前「ダイヤモンドハッピー」のときにも書いたが、この手の音楽におけるブラスは今やアニソンの象徴なので、オシャレハウスに王道アニソン感も漂うという、いいバランスの曲だ。いつも元ネタ探しをする訳では無いが何か関連を思いついたら書いておきたいとは思っていて、ちょっと考えてみたけど、あまりそういう曲はぱっと思い浮かばない。いや、単にブラスが活躍するハウスなら探せばいくらかあるのだが、「フレンド」って結構強いボーカル曲なんだよな。「真夜中のスカイハイ」「prism spiral」といった他のハウス風アイカツ曲について書いたときも色々挙げてみたけど、結局、女性J-POPアーティストのHouse Mixより近いものはないのでは、と考えるようになった。ただまあ、それでは芸がないので、アニソンじゃないけどアニソンみたいな雰囲気のEDMが聴きたい人は“Kawaii future bass”でYou Tubeを検索してもらうと良いと思う。


KIRA☆Power 〜ドリームアカデミー Ver.〜
曲については「アイカツ!のCDについて語る その7」をご参照ください。これはこれでたまらんものがある。別にドリアカ勢が大好きということもないが、セイラから始まるのも、なんかアガるよね。4人のバランスがいい。パワフルなセイラ(歌唱担当ふうり)、超カワイイきい(歌唱担当ゆな)、セクシーなそら(歌唱担当えり)、スウィートなマリア(歌唱担当えり)、4人の味が出ていてとても良い。4人いるのに歌唱担当は3人。えりさん一人二役、お見事!

アイカツ!のCDについて語る その1(2020年3月17日)
アイカツ!のCDについて語る その2(2020年7月14日)
アイカツ!のCDについて語る その3(2020年8月11日)
アイカツ!のCDについて語る その4(2020年11月30日)
アイカツ!のCDについて語る その5(2020年12月22日)
アイカツ!のCDについて語る その6(2021年1月29日)
アイカツ!のCDについて語る その7(2021年3月15日)
アイカツ!のCDについて語る その8(2021年5月24日)
アイカツ!のCDについて語る その9(2021年8月5日)
アイカツ!のCDについて語る その10(2021年11月15日)
アイカツ!のCDについて語る その11(2022年3月15日)
アイカツ!のCDについて語る その12(2022年4月27日)
アイカツ!のCDについて語る その13(2022年5月26日)
アイカツ!のCDについて語る その14(2022年6月30日)


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Author: funapee(Twitter)
都内在住のクラシック音楽ファンです。コーヒーとお酒が好きな二児の父。趣味は音源収集とコンサートに行くこと、ときどきピアノ、シンセサイザー、ドラム演奏、作曲・編曲など。詳しくは→more

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