アイカツ!のCDについて語る その15

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【序文】
このブログは基本的にはクラシック音楽について語るブログだが、どうしても記しておきたいと思うに至ったものについては、ここに記録して残しておこう。つまり、アニメ「アイカツ!」の音楽はそれほどに素晴らしい音楽であることは保証したい。ポップミュージックの進化の歴史の最先端は常にアニソンなのだ。なお、前提として、僕はクラシック音楽オタクではあるがアニソンオタクでもないし、アニメオタクでもないと思っている。実はスターズから見始めたにわかなので、スターズ曲紹介記事を2017~2018年に書いてから、2020年、この無印アイカツ曲紹介を書き始めた。スターズ曲と違ってネット上でも紹介記事は多いので、内容かぶったらゴメンナサイ。あ、ネタバレ注意。


TVアニメ/データカードダス『アイカツ!』3rdシーズンOP/EDテーマ Du-Du-Wa DO IT!!/Good morning my dream  
1 Du-Du-Wa DO IT!!
歌:るか・もな・みき from AIKATSU☆STARS!& わか from STAR☆ANIS
作詞:こだまさおり 作曲・編曲:南田健吾
2 Good morning my dream
歌:るか・もな・みき from AIKATSU☆STARS!
作詞:こだまさおり 作曲・編曲:田中秀和(MONACA)
3 Let’s アイカツ!
歌:るか・もな・みき from AIKATSU☆STARS!
作詞:辻 純更 作曲・編曲:田中秀和(MONACA)

アイカツ楽曲レビュー記事もようやく3年め(3rdシーズン)に突入。3年目前半のOP/EDのCDで、ジャケットのテイストは変わらずに新主人公であるあかり、スミレ、ひなきの3人に。帯には「がむしゃらな自分がもう大好きになってる」とOPの歌詞が書かれている。フレッシュな3人の絵がかわいい。


Du-Du-Wa DO IT!!
記念すべき“あかり世代”のスタートを飾るOPは、Signalize!とは別の意味で度肝を抜かれた。軽快なシンコペーションのジャズドラムに口笛でメインテーマが乗っかるイントロから、陽気なビッグバンドを従えて「Du-Du-Wa DO IT!! アイドル活動」と、新主人公の3人あかり(歌唱担当るか)、スミレ(歌唱担当もな)、ひなき(歌唱担当みき)がメインテーマで歌い出すという、音楽的には非の打ち所なし。スネアイントロ→トゥッティというバンドの流れも、ホイッスル→ユニゾンコーラスという歌の流れも、「今まさに始まる!」と印象づけるし、歌詞においてはジャジーなスキャット風「Du-Du-Wa」に始まり、それに掛けた「DO IT!!」からの「アイドル活動」ときて、音楽とマッチしつつアイカツをdo it するぞという意気込み溢れる番組紹介を済ましている。完璧だ。しかし度肝を抜かれたのは完成度ではなく、OP映像である。多分全員ビビったと思うけど、学園を背景にサザエさんみたいにクネクネ動きながら接近してくる3人の謎演出がインパクトあり過ぎて、音楽のことを考える余裕など一ミリもなかった。サビでは曲の振り付けで踊るんだけど、そこもスイングダンスというよりちょっとクラシックバレエっぽくて謎だし、あかりちゃんだかアラレちゃんだかわからんようなキーンって走る映像も謎だし(これはすぐ「アイカツダッシュ」だと判明する)、僕はテレビの前で「これもまたアイカツか……」と天を仰ぐのであった。そんな理解不能なぶっ飛びっぷりも、先程CD帯の話で出したように「がむしゃらな自分がもう大好きになってる」と力強く歌われたら、あーがむしゃらだもんねと変に納得させられるから不思議だ。華のあるホーン、さりげないワウ、高音が冴えるベース(2番サビ前シャレオツ!)等々、音楽的な細かい気配りも程よく手が込んでいる。さて、僕は趣味でドラムをやるので(なんでも好きだけどHR/HMよりはジャズ系)、少し語る。イントロの奏法は古くはバディ・リッチら伝説的ドラマーをはじめ、ベニー・グッドマン楽団の「シング・シング・シング」などのビッグバンドジャズをご参照願いたいし、こういうの叩けるようになりたい人はテッド・リードの教本“Progressive Steps to Syncopation for the Modern Drummer”(通称シンコペーション・ブック)をもれなくやる訳だが、Du-Du-Wa DO IT!!のようなジャズ風J-POPは、案外アマチュアだと扱いにくい。というのはJ-POPやりたい人はジャズ・ドラムに興味ない人が多く、逆にジャズやりたい人はJ-POPなんてと敬遠しがちで。以前、ジャズ風アイカツ曲のThrilling Dreamについて書いたときはEGO-WRAPPIN’を挙げたが、そういえば僕が叩いたことある中だと東京事変もジャズ寄りだなと思い、「キラーチューン」の中間部のドラム・ソロが、Du-Du-Waのイントロと同じだったなと思い出した。作曲は伊澤一葉、ドラムは刄田綴色、ぜひ聴いてみてください。こんだけ語っておいて言うのもなんだけど、別にそれほどジャズ風J-POPが好きな訳ではない。がしかし、アニソンには抜群に合うジャンルだと思う。

Sing Sing Sing
ベニー・グッドマン

Progressive Steps to Syncopation for the Modern Drummer (Ted Reed Publications) ペーパーバック – 1997/8/1
英語版 Ted Reed (著)

娯楽(バラエティ)
東京事変




Good morning my dream
3年め前半のEDは至極まっとうなエレクトロニカ風アニソン、そこはMONACA田中秀和の隙のない音楽作り。歌はOPと同じく新主人公の3人あかり(歌唱担当るか)、スミレ(歌唱担当もな)、ひなき(歌唱担当みき)。良い曲なのでネット上でもよく語られており、フォロワーさんのブログ記事(↓)では、目覚まし時計のベルやアラームの音をサンプリングしてエレクトロニカの行進曲に仕立てている点が絶賛されていました。本当に、素晴らしいアイディア!

イントロこそキメキメだが、すぐ4つ打ちキックに乗ってスネアロールやティンパニなどの古典楽器系の音色も聴こえるし、木琴(エレクトロニカあるある)のオブリガートも徹底的にダウンビートでタカタカ鳴って、それが少し遅めのマーチテンポで奏でられると、本当に「穏やかな朝の行進曲」という感じ。Aメロではとにかくコードが7th(または7sus4)のオンパレード、その雰囲気がまた夢うつつで微睡むような印象を与えるのに一役買っている。ステージでは歌われない後半もとても良くて、lalalaの終わり、「わたしを選んでくれたの ありがとう」のメロディラインの大胆さには感服する。なんて美しいんだろう、そして強い強い気持ちを感じる。その後の落ちサビでも、ラジオボイスのボーカルに、オケの音色も独特で素敵だ。と、色々語りたくなるのも今だからこそで、EDとして使用されたばかりの頃は特別な感動もなく何となく聴いていたんだけど、125話にソレイユのステージでまさかのこの曲が登場、これは食らったわ……てっきりあかりちゃんたちの「いい話」とEDを絡めてくるのかと思ってたのに、やられた。1話から125話まで見た上でのこれ、感動するに決まってるでしょ。そんじょそこらの1クール2クールものとは重みが違うよ……。ソレイユが歌った瞬間、歌詞が「ああ~そういうことか!」の連続。ということで、ソレイユ版(歌唱担当わか・ふうり・ゆな)がコンプリートBOXと各種配信にあるのでどうぞ。ストーリーとの絡みやソレイユ曲としての歌詞については、こちら(↓)のブログで詳細に語られています。うんうん、と頷きながら読んだ。




Let’s アイカツ!
「アイドル活動!」あかジェネバージョン。アイカツのアンセムである田中秀和の名曲「アイドル活動!」については、アイカツ!のCDについて語る その2をご覧ください。こちらの「Let’s アイカツ!」も同じく田中秀和作曲、新アンセムである。「アイドル活動!」がAKB48のヘビーローテションのオマージュであるのに対し、「Let’s アイカツ!」は「アイドル活動!」自身のオマージュであり、アイカツ音楽にはそういうことができるだけの土壌が仕上がった、ということを意味する。すごいことだ。曲としては当然シンプルにはなるが、やはりAメロでの転調(E→G)が熱い。アニソン(特にMONACA)定番の短三度上へ、丁寧にD7を挟んで自然な転調、これをAメロの同じメロディーラインで行うのが良い。複雑な音楽という印象を与えず、かつキーが高くなって勢いを増した印象を与える。Bメロのひたすら頭打ちドラムも、なんか「がむしゃら」感があって良い。結構エモいメロディだったりするけど、先に述べたような勢いやがむしゃら感ある音楽作りのおかげで、あかり世代のフレッシュさとか一生懸命さみたいなのまで伝わってくるんだよなあ。と同時に、112話で先輩である大スター宮さんがキレキレのダンスでステージかまして後輩との差を見せつけちゃうという、がむしゃらなだけじゃない使われ方もできて、最高なんだよなあ。このブログ記事を書くために、Good morning my dreamの次に聴いていた訳だが、Cメロのラスト(落ちサビへ入る前)が2曲とも似ている。そういうのを「ポップスの理論だ」とか「作曲者の手癖だ」とか論評するのは知識があれば簡単だが、これは「あかり世代の物語と、いちご世代の物語と、それらを1つの曲に同時に音楽的に表現しようとした結果、この2曲には同じ思いが表れたのだ」と、そう解釈して喜べるようになるのは、実はそんなに簡単ではない。そう論評できるようになるには、どうしても必要なものがある。それは長く続くストーリーと豊富な音楽によって育まれた、作り手と聴き手の作品愛に他ならない。それがあってこそ、こうして音楽を語る価値も輝くというものだ。別に自分の感想を自画自賛しているのではなく、そういう大切なことを再認識させてくれたこのアイカツという作品の素晴らしさを称えているつもりだ。この曲をもって、初代アイカツの田中秀和提供曲はすべて書き尽くしたかと思う。数々の名曲を生んだ田中氏に感謝!


アイカツ!のCDについて語る その1(2020年3月17日)
アイカツ!のCDについて語る その2(2020年7月14日)
アイカツ!のCDについて語る その3(2020年8月11日)
アイカツ!のCDについて語る その4(2020年11月30日)
アイカツ!のCDについて語る その5(2020年12月22日)
アイカツ!のCDについて語る その6(2021年1月29日)
アイカツ!のCDについて語る その7(2021年3月15日)
アイカツ!のCDについて語る その8(2021年5月24日)
アイカツ!のCDについて語る その9(2021年8月5日)
アイカツ!のCDについて語る その10(2021年11月15日)
アイカツ!のCDについて語る その11(2022年3月15日)
アイカツ!のCDについて語る その12(2022年4月27日)
アイカツ!のCDについて語る その13(2022年5月26日)
アイカツ!のCDについて語る その14(2022年6月30日)
アイカツ!のCDについて語る その15(2022年7月8日)
アイカツ!のCDについて語る その16(2022年7月27日)
アイカツ!のCDについて語る その17(2022年8月7日)
アイカツ!のCDについて語る その18(2022年8月27日)
アイカツ!のCDについて語る その19(2022年9月17日)
アイカツ!のCDについて語る その20(2022年9月28日)
アイカツ!のCDについて語る その21(2022年11月26日)
アイカツ!のCDについて語る その22(2023年2月12日)
アイカツ!のCDについて語る その23(2023年2月16日)
アイカツ!のCDについて語る その24(2023年2月18日)

Du-Du-Wa DO IT!!/Good morning my dream
AIKATSU☆STARS!


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Author: funapee(Twitter)
都内在住のクラシック音楽ファンです。コーヒーとお酒が好きな二児の父。趣味は音源収集とコンサートに行くこと、ときどきピアノ、シンセサイザー、ドラム演奏、作曲・編曲など。詳しくは→more

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