【序文】
このブログは基本的にはクラシック音楽について語るブログだが、どうしても記しておきたいと思うに至ったものについては、ここに記録して残しておこう。つまり、アニメ「アイカツ!」の音楽はそれほどに素晴らしい音楽であることは保証したい。ポップミュージックの進化の歴史の最先端は常にアニソンなのだ。なお、前提として、僕はクラシック音楽オタクではあるがアニソンオタクでもないし、アニメオタクでもないと思っている。実はスターズから見始めたにわかなので、スターズ曲紹介記事を2017~2018年に書いてから、2020年、この無印アイカツ曲紹介を書き始めた。スターズ曲と違ってネット上でも紹介記事は多いので、内容かぶったらゴメンナサイ。あ、ネタバレ注意。
『劇場版アイカツ!』ボーカル集 輝きのエチュード
1 輝きのエチュード
歌:わか from STAR☆ANIS 作詞:こだまさおり 作曲・編曲:石濱 翔(MONACA)
2 SHINING LINE* 〜スターライト Ver.〜
歌:わか・ふうり・ゆな・れみ・えり・るか from STAR☆ANIS 作詞:こだまさおり 作曲・編曲:石濱 翔(MONACA)
3 Let’s アイカツ! 〜いちご・美月・あかり Ver.〜
歌:わか・りすこ・るか from STAR☆ANIS 作詞:こだまさおり 作曲・編曲:田中秀和(MONACA)
4 アイカツ!エンディングメドレー 〜PandaBoY MIX〜
MIX:PandaBoY
「その眼差しの彼方まで――」という帯の文句だけでも泣ける、名曲の登場である。劇場版で使われたボーカル曲集。曲の良さもさることながら、内古閑智之さんの完璧なジャケット・デザインも素晴らし過ぎる。この絵が描かれている劇場版アイカツ!のクリアファイルは僕の愛用品のひとつである。
輝きのエチュード
劇場版アイカツの中心となる楽曲で、曲と映画のストーリーが不可分なため、必然的に映画の感想や考察の記事に欠かさず現れる。だから実はネット上で最も熱く語られているアイカツ曲かもしれない。木村監督のAERAのインタビュー記事も残っているし、また歌詞について詳細に考察しているファンの記事も見つかるので、これを読んでいる方はもう他にも沢山読んだ方が多いかもしれない。内容かぶりがあったら恐縮だが、それでも自分の書きたいことを書いておこう。松田聖子の「赤いスイートピー」のオマージュで、Aメロの入りのメロディをサビの後半に持ってくるのはそのまんまだ。作編曲は石濱さん、歌謡曲らしいシンプルさも大事にしつつ現代アニソンっぽさもしっかり。印象的なストリングスは帆足さんのアレンジだそうだ。メロディは「赤いスイートピー」だが、全体の雰囲気は「愛をこめて花束を」をも彷彿とさせる。後者のアレンジは蔦谷好位置さん、アイカツスターズ御用達。なお、「赤いスイートピー」は松任谷由実が松田聖子に提供した曲だが、映画でも同様に「輝きのエチュード」はシンガーソングライターの花音が星宮いちご(歌唱担当わか)に提供した曲。この2曲、楽曲提供後にアイドル側から曲の修正を依頼して作り直し、それから発表された、というところまで同じ。さらに言うと、「赤いスイートピー」作詞の松本隆が、ユーミンの旋律に合わせようとすると言葉もユーミン風になってしまうので相当頑張って松本隆風になるよう努めた結果「松田聖子と同期した」と言うまでに至ったのと同様に、「輝きのエチュード」でも、花音の詞はいちごの本当に歌いたいことのために改編することとなった結果、花音の本領を発揮できて尚且いちごらしい詞になった訳で、いわば星宮いちごと同期するに至ったのである……。と、ここまでは共通点を書いてみた。ただ、どちらかというと僕が言いたいのはここからで、特に歌詞についての2曲の相違点を指摘しておきたい。歌詞の内容自体は、「赤いスイートピー」はラブソングであり、「輝きのエチュード」は広くラブソングと解釈できるようにも書かれているが、実際はいちごの美月に対する感謝の思いである、という違いはあるが、内容の違い以上に、歌詞のスタイルに注目したい。「赤いスイートピー」が情景描写的であるのに対し、「輝きのエチュード」は直接気持ちを打ち明けるような、等身大の愛のメッセージソングになっている。松本隆の作詞法に「ディテールをまわりに積み上げていって、肝心なことを書かない。すべてを伏線にしていくのだけど、どこかでバーンと合わせる。そうすると、とんでもない感動が来る」というテクニック的なものがあり、つまりここでは、いじらしくも美しいディテールが徐々に徐々に積み上げられていって、それがサビの最後になって“赤いスイートピー”が咲くことでバーンと感動する。しかし「輝きのエチュード」はそうではない。全ての文言が強い思いの込められた伝えたい言葉であり、我々は一言一句すべてに感動できるのだ。リスナーにとって、この感情の動かされ方の違いは非常に大きい。音楽は似ているのに、聴後感の違いに大きく出る。歌い出しでも、情景描写であり一ディテールである「春色の汽車に乗って海に連れて行ってよ」で感動する人は少ないと思うが、「月明かり浮かぶスロープに並んだ足あとがふたつ」はもう泣けちゃうんだよな……いや、この部分は情景描写やんけ!というツッコミは当然正しいと認めるけども、この始め方こそオマージュであり、同時にこれは一ディテールなんかではなく、この曲を誰のために捧ぐのかをきっちり表明する「メッセージとしての核心」であることは、ファンなら誰しもわかることだろう。サビで繰り返し歌われる“赤いスイートピー”に感動するのとは違い、“輝きのエチュード”という言葉は2番サビで一度出るのみで、そこに向けて全てが書かれている訳ではないのだ。それはそれとして、このタイトルの「エチュード」というのは、とても良い。クラシック音楽では多くのエチュードが自己を磨くための「練習曲」であり同時に、表現力も問われる芸術的に高い完成度の作品である。「輝きのエチュード」も深い表現を携えながら、大舞台の勝負曲でさえ「高みを目指し研鑽する音楽」であるという点が、どこまでもアイカツらしい。SHININGのエチュード。これ以上相応しいものはないだろう。
赤いスイートピー (CCCD)
松田聖子
愛をこめて花束を
Superfly
松本隆 言葉の教室 単行本(ソフトカバー) – 2021/11/16
延江 浩 (著)
松田聖子と中森明菜 (幻冬舎新書) 新書 – 2007/11/1
中川 右介 (著)
SHINING LINE* 〜スターライト Ver.〜
曲については「アイカツ!のCDについて語る その12」をご参照ください。アイカツ1年め主要メンバーによる歌唱。いちご(歌唱担当わか)、あおい(歌唱担当ふうり)、蘭(歌唱担当ゆな)、おとめ(歌唱担当れみ)、ユリカ(歌唱担当れみ)、かえで(歌唱担当ゆな)、さくら(歌唱担当えり)、あかり(歌唱担当るか)。映画の冒頭Liveを飾り、開始早々でテンションMAXになるのはこれのおかげだ。各々の歌詞分担も良い、特に主人公いちご・あかり。
Let’s アイカツ! 〜いちご・美月・あかり Ver.〜
曲については「アイカツ!のCDについて語る その15」をご参照ください。いちご(歌唱担当わか)、美月(歌唱担当りすこ)、あかり(歌唱担当るか)という、すごい3人で歌っている。余談だが、ここであかりちゃんが着ることとなるのがスリーピングオーロラコーデというのは、なんとも絶妙なチョイス。いちご、美月に対して、まだ「眠れる姫」であることのメタファーなのだろう(しかもいちごの最初のPRであるオーロラキスコーデとオーロラ繋がりもある)。あかりちゃんは107話以降の勝負ドレスとなっているオデットスワンコーデ、116話ではピンクキングマウスコーデと、一応チャイコフスキーの三大バレエ(眠れる森の美女、白鳥の湖、くるみ割り人形)をコンプしているというのが、クラシック音楽ファンとしては嬉しいところだ。126話ではあかりちゃんがオデットスワンコーデ、スミレちゃんがオディールスワンコーデ、ひなきちゃんがロットバルトネオンコーデで3人で白鳥の湖で揃ったのは興奮したけども、データカードダスの方ではもっと色々あって(僕はやったことないが)、ネットで素敵なドレスを見るのは楽しい。推しのあおい姐さんがネオジークフリートコーデという白鳥の湖の王子様ジークフリートをモチーフにしたドレスを着ている絵がフォトカツにあって、最高に眼福。ブログではあまりバレエの話はしないけど、Twitterではたまに観てツイートしているので、ぜひ。
アイカツ!エンディングメドレー 〜PandaBoY MIX〜
その名の通り、カレンダーガール、ヒラリ/ヒトリ/キラリ、オリジナルスター☆彡、Preciousのメドレー。各曲についてはそれぞれリンクから記事に飛びます。映画のエンディング曲。リミックスはアイカツシリーズきっての迷曲、Kira・pata・shiningを手掛けたPandaBoY。「輝きのエチュード」という新曲が映画のコアである分、OP/EDは普段のアイカツらしくしたいという方針があったのかどうかは知らないが、非常にオーソドックスなメドレー。しかしED映像は超こだわってて楽しいので、映像と合わせて聴きたい。
アイカツ!のCDについて語る その1(2020年3月17日)
アイカツ!のCDについて語る その2(2020年7月14日)
アイカツ!のCDについて語る その3(2020年8月11日)
アイカツ!のCDについて語る その4(2020年11月30日)
アイカツ!のCDについて語る その5(2020年12月22日)
アイカツ!のCDについて語る その6(2021年1月29日)
アイカツ!のCDについて語る その7(2021年3月15日)
アイカツ!のCDについて語る その8(2021年5月24日)
アイカツ!のCDについて語る その9(2021年8月5日)
アイカツ!のCDについて語る その10(2021年11月15日)
アイカツ!のCDについて語る その11(2022年3月15日)
アイカツ!のCDについて語る その12(2022年4月27日)
アイカツ!のCDについて語る その13(2022年5月26日)
アイカツ!のCDについて語る その14(2022年6月30日)
アイカツ!のCDについて語る その15(2022年7月8日)
アイカツ!のCDについて語る その16(2022年7月27日)
アイカツ!のCDについて語る その17(2022年8月7日)
アイカツ!のCDについて語る その18(2022年8月27日)
アイカツ!のCDについて語る その19(2022年9月17日)
アイカツ!のCDについて語る その20(2022年9月28日)
アイカツ!のCDについて語る その21(2022年11月26日)
アイカツ!のCDについて語る その22(2023年2月12日)
アイカツ!のCDについて語る その23(2023年2月16日)
アイカツ!のCDについて語る その24(2023年2月18日)
劇場版 アイカツ!ボーカル集 輝きのエチュード
STAR☆ANIS
劇場版アイカツ! 通常版 [DVD]
諸星すみれ (出演), 田所あずさ (出演), 木村 隆一 (監督)
都内在住のクラシック音楽ファンです。コーヒーとお酒が好きな二児の父。趣味は音源収集とコンサートに行くこと、ときどきピアノ、シンセサイザー、ドラム演奏、作曲・編曲など。詳しくは→more