アルコール島戦記5:西班牙のアシード、廿日市のメディア・ナランハ

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★前回の記事はこちら→アルコール島戦記4:宮城峡蒸留所を見学する(2025年4月17日)

(記事作成日:2025年12月5日)

もう12月、今年のアルコール戦を総括する時期になった。もう少し頻度がないと連載の体をとれない気がするが、まあ良いか。前回は宮城峡蒸溜所見学のことを書いたんだった。そんな縁もあり、今年は例年よりウイスキーを多く飲んだと思う。夏も家でハイボール作って飲む日が多かったと思う。思う、思うって、はっきり覚えていないからあやふやなことを言っているのだが、ブログ更新と違ってウイスキーを飲む頻度は高かったはずだ。

ここ2,3年くらいは、夏と言えば赤ワインのCCレモン割で晩酌するのが定番だった。一応その飲み方もティント・デ・ベラーノ(Tinto de verano)という名前が付いており、赤ワインを任意の炭酸飲料で割って飲むスペインで親しまれているカクテルである。以前にTwitterか何かで知った飲み方で、これが美味しくて美味しくて仕方ないので、暑いときは家でこれを飲むに限る。ビタミンCも摂れるし、ビールより健康に良いんじゃないかしら。知らんけど。
スーパーで1本100円しないCCレモンと、適当な安い赤ワインを用意し、両方ともギンギンに冷やしておく。グラスに雑に氷を入れて、赤ワインをざっと入れて、CCレモンをそっと入れて、軽くステア。そのままキッチンで一口目を飲むと半分くらい無くなってしまい、これをテーブルに持っていく意味があるか自問し、とりあえず飲み干し、2杯めを作ったらテーブルに移動するのである。適当な安ワインと言ってから紹介するのは非常に気が引けるのだが、今年はサングレ・デ・トロを割った。昨年なんかはほぼ、おたる赤にしてたな、寒いところのお酒の方が夏に飲むのに良いかなと思って。今年はちょっとスペインを意識したのだ。

TORRES(トーレス) サングレ・デ・トロ [ 赤ワイン ミディアムボディ スペイン 750ml ]

北海道ワイン おたる赤甘口 [ 赤ワイン ミディアムライト 日本 720ml ]

僕は甘酸っぱいものが好きだ。それは例えば青春とか、恋とか……あ、そういう話は要らない? じゃあ真面目に話すけど、甘酸っぱいものが好きで、フルーツも特にベリー系とかめちゃ好き。あとこれはあまりリアル知人では同志に出会えないのだけど、チョコとベリーの組み合わせ、大好き。フォンダンショコラにベリーソースかけたのとか、クランベリーヨーグルトチョコとかね。酸っぱいもの単体がそんなに好きなわけではなく、レモン丸かじりとかしたくないけど、でも酸味は結構自分にとって重要な味だと思っている。

赤ワインそのものも好きだし、そこにやはり甘酸っぱさが足されるのが良いんだよね。あと名前が良いだろ、ティント・デ・ベラーノ、かっこいい。「夏の赤」って意味、かっこいいじゃんね。3倍うまいわ。缶チューハイなんか美味しくもないし味気ないし飲んだって別に何にも思わないけど、ティント・デ・ベラーノを飲むと突然スペインの気分になる。アンダルシアの熱い風を感じる。グラシアス、つまりありがとう。もしティント・デ・ベラーノが缶で売っていたとしても、僕は自分で適当に割ることに喜びを感じるだろう。きっとスペイン人もそうやって飲んでいるはずだ。昔、村上春樹の本で読んだのだ、アイルランドではウイスキーをコップに入れてそこに蛇口から水ジャーって入れて割って飲むんだみたいなことが書いてあって、なるほど本場ってそういうもなののね、と感銘を受けた次第だが、きっとスペインでも適当に割って飲むのが日常なんだろう。良い意味で雑なところに、日常の喜びってあるんだよね、わかるかい坊や? ちなみにさっき調べたらスペインでは大手メーカーが缶のティント・デ・ベラーノ出してるらしい。売ってるのかよ! 現地のものだったら、缶だけどそっちの方が本物なんじゃないか? 機会があれば買ってみたい。

La CaseraのTinto de Verano、日本で買えるのかしら。

余談だが、酸味、酸味と口酸っぱく言う割に実はコーヒーはさほど酸味にこだわりがない。以前、楽曲記事の方にも書いたように、このお酒雑談連載をロードス島戦記からパクって「アルコール島戦記」にするかコーヒー党奇談からパクって「アルコール党奇談」にするか悩んだ末、前者にしたわけだけども、僕はコーヒーも愛していますし、酸味も愛しているんですけど、酸っぱいコーヒーはそこまで好きではないのだ。嫌いでもないけど。まあコーヒーの話はまたいずれ。


それでも今年はウイスキーの年だったと言える。なんでも値上がりしてブチギレながらも、これを買うことがポテくまくんの応援になると信じて(戦記2を参照)、せっせとイチローズモルトホワイトラベルを炭酸割りで飲んだ夏だった。ニッカの「良い飲み手」には、今年はまだなれなかったな。宮城峡蒸溜所でお土産に買ったものはもちろん美味しく飲んだけどね。角瓶とブラックニッカはある意味、宗教上の理由とでも言えるような理由で飲まないのだけども、こう何でも値上がりすると何を選ぶかも慎重にならざるをえない。一時期は海外シングルモルトばかり飲んでいたのだが、最近はポテくまくんのおかげで国産ブレンデッドの気分が強いため、何か良いものをと探して出会ったのが戸河内プレミアムである。700mlで定価3,000円くらい、クーポンとかあったのでもっと安く買った。うまいわ。

ブレンデッドジャパーニーズウイスキー 戸河内プレミアム 瓶 40度 700ml


僕は自分の嗜好の偏りの大きさ、まあ偏見と言ってもいいんだけど、常に曇りなき眼で真実だけを見つめるような純粋な生き方はできていないと意識しているし、それはお酒だろうが音楽だろうが同じで、実際は良いとわかっているけど個人的な理由で嫌っているものもとても多い。しかし、それでも世の中は嫌うよりも好きな方が幸せなことが多いので、どうにか好きになれるのであれば好きになりたいとは思う。何か理由があって愛するというよりも、愛するために理由を見つけていくのが人生なんじゃないかとも思う。という話を、以前どこかで書いたような気がするのだが、書いてなかったかもしれない。もし覚えている熱烈な僕のフアンの方がいたら教えてほしい。
まあ何が言いたいかと言うと、安くてうまい戸河内プレミアムを、それより1,000円か2,000円ばかり高いけどうまいイチローズモルトホワイトラベルよりも愛せる理由が見つかるのかどうか、ということだ。強敵だよ秩父は。だってポテくまくんを擁しているんだから。もし戸河内がアイカツの聖地とかだったら、まだ戦いようもあると思うんだけど……ほら、この連載は戦記だからね。戦った方がいいんだよ。


スペインの音楽、特にカタルーニャの音楽は最近の僕の興味の大きさとしてはかなりの方で、だから敢えて今夏の割り用にカタルーニャのワインを選ぼうと決めたのだ。いや普通に安かったからというのも、もちろんあるよ。でもやっぱりそこに、何か自分なりに理由が見つかれば、それで愛せるようになるものなのだ。当然、あまりに不味かったらどうしようもないけど。そもそも連載1回めの大手ビール対決からそうなのだ、あんなのどこのビール飲んだってそれなりにうまいのは決まり切った話で、そこに自分なりの理由を探すことを楽しんでいるだけである。ただそれだけの話で、ただそれだけで楽しいのだ。

今まで全く知らなかった「戸河内」は広島県廿日市市桜尾にあるSAKURAO DISTILLERY(桜尾蒸留所)が作っている。元は中国醸造株式会社で、2021年に株式会社サクラオブルワリーアンドディスティラリーに社名変更。戸河内というのも広島の地名だそうだ。JR(旧国鉄)の廃線になった戸河内トンネルで熟成させているらしい。廃校になった学校を利用して、というのはよく聞く気がするが、廃トンネルは珍しい。トンネルは確かに熟成には良さそうな環境だ。
廃校を利用した日本のウイスキー蒸留所であれば、2023年に飛騨高山蒸留所(旧高根小学校)、2024年に田野蒸留所(旧田野小学校)ができ、今年クラウドファンディングが達成した当別蒸留所(旧弁華別小学校)もあってトレンドと言えなくもない。また菱田蒸留所というところは、廃校になった旧田之浦中学校を熟成庫として借りているらしい。廃校の活用は地域活性化に良いんだろうし文句はないけど、なんか、凄い話だよね、元々人間を育んでいた場所でお酒を育むことになるというのは……子どもたちがいなくなり、大人が大人のための嗜好品を作るって、本当に少子化なんだなと実感してしまう。それこそ今年は、宮城峡蒸溜所で竹鶴政孝とその仲間たちが未来を見据えてこの地を探し出したという熱い話を聞いたもんだからなおさら。いや、廃校利用の蒸留所だって熱い気持ちでやってるんだろうけど、個々の話ではなくてね。これが令和の日本なんだな、と。なんか暗い気持ちになってきた、うちの子どもたちが育った頃には、どうなっているんだろう。


鉄道の廃トンネルだって、結局は人がいないから不要なわけで、よく考えるとそんなに明るい話題でもない。うーん、戸河内も愛する理由を見つけられなそうだな、残念だ、うまいのに。いや普通にうまければそれでいいんだけどね。僕は基本的に東日本にしか縁のない人間なので、広島ではどうしようもない。ああ、広島がアイカツの聖地にでもなっていればな! でも、広島は今までで二度訪問したことがある。最初は小学生の頃、多分高学年だったと思うが、親戚が住んでいたので行ったのだった。初めて食べた広島風のお好み焼きは美味しかったなあ。路面電車も初めて乗ったし、宮島も行ったな、厳島神社の美しさには驚いたなあ。あと子どもながらに平和記念資料館や原爆ドームのインパクトも大きかった。二度目は大学生の頃、同じ学部の数少ない友人の一人と夜行バスで旅行したのだった。十数年前か。そのときの写真はまだ残っているので、久しぶりに見返してみた。大体、子どもの頃と同じ場所にしか行っていないようだ。原爆ドーム見て、宮島行って鹿を愛でて鳥居見て、お好み焼き食べて……その写真の中に、宮島の展望台からの景色があった。きれいだ。瀬戸内海の島から対岸の廿日市市や広島市までを360°一望できる。

大学生の頃に撮った、宮島の展望台からの写真。
対岸。フェリーの往来が見える。

眺めていてふと思った。これ、もしかしてSAKURAO DISTILLERYも映ってるんじゃない? 廿日市でしょ? そう思ってGoogleマップと写真をにらめっこして調べてみた。フェリーが行き来する先は宮島口、そうするとその少し右に見える臨海の高い建物は阿品駅近くの高層マンション群だろう。さらに右側にあるせり出した部分は特徴的な「木材港」で間違いない、そうすると……

多分ね。間違ってたらごめんなさい。

SAKURAO DISTILLERYはこの辺にあるはず。この頃はまだ中国醸造株式会社だったかもしれないし住所も違うかもしれないが、ここに2021年にはSAKURAO DISTILLERYができるはずだ。おっと、急に親近感が湧いてきたぞ(笑) つい最近まで、何となく話は合いそうだけどいまいちお近づきになり難い雰囲気を出していた人と「え!? 君、昔一度会っていたのか! もしかしらた僕ら、子どもの頃にも一回会っていたかもしれないよね! 運命の出会いだね!」なんて話ができそうで、嬉しくなってしまう。なんなら戸河内トンネルももしかしたらこの画角内かもしれない、知らんけど。遠くの山の方にあるかな。まあでも、そんなご縁があるなら、また戸河内か桜尾か、買っても良いかな。安くてうまいし。でもでも、まだイチローズモルト(すなわちポテくまくん)には敵わないよ、もし宮島とか廿日市に僕の心をキュンキュンさせてくれる、かわいいゆるキャラがいればもう少し傾けるかもしれない。どうかな。鹿のキャラとかいないのかしら。昨今の社会情勢を考慮すると、熊は駆除対象だが、鹿は保護対象のようだし、鹿かわいいからな。↓も当時撮った写真。なお一緒に旅行に行ったO君は大学卒業以来一度も連絡取ったことないから、media naranjaではないようだが、そこの鹿さんたち、君たちはどうなの?

「media naranjaって言うのはスペイン語で半分のオレンジ、運命の人ってことだよ」「レモンだったら広島にもCCレモンにもかかって完璧なオチだったのにね」

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Author: funapee(Twitter)
都内在住のクラシック音楽ファンです。コーヒーとお酒が好きな二児の父。趣味は音源収集とコンサートに行くこと、ときどきピアノ、シンセサイザー、ドラム演奏、作曲・編曲など。詳しくは→more

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